では共働きの場合はどうだろう。前述の月額金額には専業主婦である妻の基礎年金部分も入っているので、夫の分だけだと15万4777円となる。仮に夫婦が同じレベルの賃金で厚生年金に加入して60歳まで働いた場合は倍の約31万円となるので、先ほどと同じくこの金額で65歳から90歳まで受給した場合、単純計算をするとその総計は約9280万円となる。

 もちろん、残念ながらまだ現在は男女の賃金格差は存在するし、どちらかが先に亡くなった場合は、遺族年金の支給となるため、この金額は必ずしも現実的なものとは言い切れない。ただ、少なくともこの前提だと2600万円以上の差となるし、場合によってはこれに加えて、サラリーマンの場合では退職金や企業年金が支給される場合もあるため、さらに差が大きくなる可能性だってある。

 ただし、これは若い頃からずっと共働きであった場合が前提だ。読者の中には、「まだ若い夫婦ならともかく、妻は長年ずっと専業主婦だったのだから、50歳近くになって今さら共働きといっても無理じゃないだろうか」と思っている人も多いことだろう。しかしながら必ずしもそういうわけではない。

 今までは専業主婦が働くといえばパートタイムで働き、配偶者控除が適用される限度額や社会保険料の負担が発生しない範囲、俗に「103万円の壁」とか「106万円の壁」といわれるような、収入をセーブして働く方法が一般的であった。ところが、これからはこういう「壁」は気にせずに積極的に働いた方が良いという時代になりそうなのだ。そのあたりについて、ここから考えてみよう。