語弊を恐れず言えば、選挙区で祝電を送り、あいさつをした議員が、本当に教団と深い付き合いをしているわけではない。

 本当に教団と密な付き合いをしているのは、全国の選挙区の動向を掌握しつつ、教団の力を借りて票を割り振る選挙区について綿密に調整し、個別の議員に指示を出している党や派閥の幹部である。

 つまり、岸田首相や茂木敏充党幹事長らが言うところの「旧統一教会との関係は、個々の議員の政治活動であり、党には責任はない」という主張は正しくない。自民党と旧統一教会は「組織的な関係」そのものだ。

 にもかかわらず、彼らは個別の議員に責任を押し付けようとしているのだ。今後は、集票力の弱い若手議員などが、教団の後ろ盾を失ったことで落選することもあるだろう。これは「トカゲのしっぽ切り」のような酷な話だ。

従来の政治手法を駆使すれば
「未来の宰相」への道は遠のく

 河野氏がそうした内情を知りながらも、これまでのような政治手法を用いて、旧統一教会と関係を持っていた議員の事例などをSNSで批判するとどうなるか。

 おそらく“あしき伝統”によって教団と関係を持たざるを得なかった議員たちは、国民から激しくたたかれる。彼・彼女らが次の選挙で当選できない事態も起こるだろう。

 だが河野氏本人は、首相候補を輩出してきた名門政治一族の出身だ。自身の選挙で落選の心配などしたことがない。強固な地盤を引き継ぎ、旧統一教会の支援が必要ない「強者」である。

 その河野氏が、「政治と宗教」の問題をネットで批判した場合、確かに「国民のヒーロー」になるかもしれない。だが、また党内で恨みを買うのは間違いない。人望をさらに失い、「未来の宰相」への道はますます遠のくだろう。

 検討会の設置など、消費者の救済はもちろん進めるべきだ。だが、SNSを駆使した自己PRの戦略を再考し、党内の仲間と協力することも、「政治と宗教」を巡る根本的な問題を解決する上では重要なのではないか。

 河野氏はデジタル相でもある。日本社会のデジタル化の遅れは大きな課題であり、河野氏一人で簡単に解決できるものではない。河野氏は「大衆迎合」が宰相への道を遠ざけていることにそろそろ気付き、党内や各界の人材と協力して改革を推進すべきである。

経済安全保障担当相・高市早苗氏が
人事に不満を持つ理由

 注目すべき人物の2人目は、党政調会長からスライドし、経済安全保障担当相に就いた高市早苗氏だ。

 高市氏は、経験豊富で実務能力が高い政治家である(第285回・p3)。総務相としての在任期間は歴代最長だ。通信政策やサイバーセキュリティーに精通しているし、総務省という巨大官庁を動かしてきた経験もある。

 そんな高市氏は先日、自身のTwitterに「入閣への不満」を投稿したとして物議を醸した。また、小林鷹之前経済安全保障担当相からの引き継ぎ式を中止し、内閣府職員への就任あいさつ式を欠席した。

 国益に関わる最重要課題を扱う経済安全保障担当相に、高市氏は最適任と思われる。にもかかわらず、なぜ不満なのだろうか。