「うっかりミス」を起こさないために
エラーの「型」を知っておこう

 邱氏は本書で、先行研究の分類法を発展させ、ヒューマンエラーについての新たな分類を提示している。

 本書の「幹」の部分にあたるであろう、その分類とは「知識型エラー」「規則型エラー」「スキル型エラー」の3種類である。

「知識型エラー」は、意思決定、問題解決、交渉、分析、審査、設計、計画、危機管理といった、知識と判断力が要求される場面で発生しがちだ。

 中でも、規則やマニュアル、前例がない状況で、知識、経験、直観をもとに判断を下す過程で起こりやすい。上記3種のエラーの中では、起こる確率は最も高いという。

 一方、「規則型エラー」は、規則やマニュアルを使って作業する際に発生しやすい。また、このエラーの原因は、大きく分けて二つあるという。

 一つ目は、規則やマニュアル自体に不備があり、作業者がそれらを守った結果、意図しないミスにつながるケースだ。

 二つ目は、作業者が規則やマニュアルを意図的に守らなかったり、ルールでは対処できない問題に遭遇し、不可抗力的に守れなかったりするケースである。発生率は知識型エラーより低いが、企業の問題の原因になりやすいそうだ。

 そして「スキル型エラー」は、習熟された規則的な作業で起こる「うっかりミス」だ。3分類の中ではもっとも発生率が低いが、慣れが過信につながり、慎重さを欠いたり、点検を怠ったりすると起こる。場合によっては致命的エラーになることもある。

 では、本書の内容をもとに、前述したKDDIの通信障害の要因を独自に考察してみたい。同社が7月29日に行った説明会での発表を見る限り、2番目の「規則型エラー」が障害の主な原因と考えられる。