官民で拡大する
アグリテック・エコシステム

 上述の「フレンチ・アグリテック」は、国の主導で次の5項目を目指したものです。

(1)気候変動に適応した農業の実現
(2)農薬・肥料の削減、資源のより良い管理など持続可能なアグロエコロジーの実施
(3)デジタル技術・機器を使用することで農業従事者の作業負担を軽減し、経済状況の改善や日常生活を充実させるための支援
(4)廃棄物対策や食品の環境負荷表示など持続的な消費形態の発展
(5)新たな農業・食糧資源の開発促進

 他方、こうした国の動きに連動し、民間サイドでもアグリテックのエコシステム拡大に向けた動きが活発化しています。

 それをけん引するのが、2016年に設立された同国最大のアグリテック業界団体「La Ferme Digital(デジタルファーム協会)」です。

 その設立趣旨は、経済および環境の両面でより効率的な農林水産業のイノベーションを推進し、消費者と生産者の距離を縮め、世界の食の課題を質・量の両面からサポートするというものです。同団体には、現在アグリテック関連スタートアップ企業77社を含む100の企業団体が加盟し、国と連携しつつさまざまなイベント・調査・PR活動を実施し、アグリテック分野のエコシステムの拡大を図っています。

 同団体の立ち上げメンバーであり、現会長のジェローム・ル・ロワ氏は、ICT技術で農業の省力化、効率化、リスク削減をサポートするWeenatのCEOを務めます。同氏は、仏レンヌ大学で生体力学の修士号を取得後、京都大学、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)、米スタンフォード大学で学業を修めた後、2014年にWeenatを立ち上げた日本通の起業家でもあります。