官民連携で進める
フレンチ・アグリテック

 EUは持続可能な農業への転換を目指し、全農地面積に占める有機農業用地の割合(有機農業率)を2030年までに少なくとも25%にすると目標設定するなど、各種の野心的な目標を掲げています(A Farm to Fork Strategy「農場から食卓まで戦略」、EU Biodiversity Strategy for 2030「生物多様性戦略2030」)。

 その達成には、持続可能な農業への転換を支えるためのテクノロジーの開発と導入が欠かせません。欧州のアグリテックへの投資額の世界シェアは25%と、米国の60%に次ぐ重要な地域となっています。中でも欧州最大の農業国フランスは、2020年度のアグリテック・フードテック分野への資金調達額が、EU加盟国中最大の5億6200万ユーロ(約810億円)で、世界5位になります。同分野のスタートアップ企業も、10年前の十数社から現在は215社以上に急増しています(出所:フランス農業・食糧省)。

 その背景には政府による強力な後押しがあります。昨年8月30日「フランスを世界的なアグリテックの発祥地とすることを目指す(ドノルマンディー農業・食料相)」とし、「フレンチ・アグリテック」を発表しています。農業分野におけるイノベーションの加速に向けたプロジェクトの始動です。農林水産業と関連食品、バイオテクノロジー、バイオエネルギー、有機廃棄物回収など幅広い分野のスタートアップや中小企業を支援するものです。5年間で2億ユーロ(約290億円)の財政支援も含め、技術開発の後押しやその輸出支援を加速するとともに、同分野のエコシステム強化を目的にしています。

 これに加え、政府系投資銀行BPIフランスも、アグリテック・フードテック分野のイノベーション支援を強化し、今後5年間で約7億ユーロ(約1010億円)の資金供与を予定しています。