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米ボーイングの新鋭中型機787型機のトラブルの原因を巡り、バッテリー周辺の不具合が焦点となっている。目下、機体の製造国責任を担う米連邦航空局(FAA)が中心となり、原因究明の調査が行われている。日米両空港におけるトラブル発生から間髪を容れず、1月21日、国土交通省とFAAが合同でジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)に立ち入り検査に入ったことで、GSユアサが諸悪の根源であるかのような集中砲火を浴びている。
問題のバッテリー周辺機器については、GSユアサがバッテリーを、仏軍需メーカーのタレスがバッテリー制御システムを担当している。GSユアサがタレスへバッテリーを納入し、タレスがボーイングへ“完成品”を納入するという流れだ。つまり、ボーイングから見るとタレスが1次サプライヤー、GSユアサが2次サプライヤーである。
トラブルの原因が、バッテリーにあるのか、システムにあるのか、もしくはボーイングが発注した設計仕様にあるのかは定かではない。にもかかわらず、真っ先にGSユアサが疑われたことに、「タレス、ボーイングも揃って検査すべき」(経済産業省幹部)と不信感を持つ関係者は少なくない。
国交省航空局によれば、「立ち入り検査がボーイング、タレスに入っているかどうかの情報は伝わっていない」としている。FAAがどのような方針、手順で調査を行っているか、詳細が国交省に伝わっておらず、米当局に検査の主導権を握られている。原因追究は時間をかけて徹底的に行われるべきだが、米側が早期の幕引きを狙っているようにも見える。
他方で、今回のトラブル発生によって、国際分業が進んだ新型航空機に、日系メーカーが参画することの難しさが顕在化したとも言える。電機・自動車産業において、標準化された部品を組み合わせて設計する「モジュール化」が進んでいるように、航空機産業でもモジュール化が加速している。自動車の部品点数が約2万点であるのに対して、航空機のそれは約300万点。部品メーカーは、巨大なサプライヤーピラミッドの上位となり、完成品メーカー(ボーイング)の開発の中枢に関わるようでないと真の競争力は発揮できない。