「始皇帝」を目指す習近平が、台湾併合にこだわる“本当の理由”とはPhoto:Lintao Zhang/gettyimages

習近平の本性を暴露した
女性研究者の「論文」

 中国人学者の蔡霞(さいか)氏が米外交誌の『フォーリン・アフェアーズ・レポート(Foreign Affairs Report)』誌9・10月号に発表した論文「習近平の弱点」が話題になっている。

 蔡霞氏は1965年生まれの中国共産党中央党校の元教授で、近年まで習近平指導部の教育部門中枢にいて中国共産党の思想的なバックグラウンドを支えてきた政治理論研究者だ。

 政治自由化を主張した彼女は、やがて習近平批判に回ったことで党ににらまれ、難を逃れるために2019年に渡米、2020年に中国共産党から除名された。マルクス主義理論から出発するものの、開明的なスタンスをとって党内民主主義を目指す「改革派」の学者であったために、新型コロナウイルスの存在に警鐘を鳴らして訓戒処分を受けた武漢の医師、李文亮氏の死をきっかけに、言論の自由を求めて習近平指導部を真っ向から批判し続けた。

 その蔡霞氏の書いた論文「習近平の弱点」は、サブタイトルが「傲慢(ごうまん)とパラノイアが中国の未来を脅かす理由」となっていることからも、苛烈な習近平批判であることは想像できるだろう。言うまでもなく、「傲慢」と「パラノイア」とは習主席の持つ資質のことである。

 蔡霞氏によると、習主席は政治家として突出した才能に恵まれた人物ではない。父親の習仲勲は非の打ちどころのない革命的な経歴を持つ指導者であったが、習主席はその父親の人脈に恩恵を受けて出世できただけの人物として描かれている。本人のキャリアをたどっても目立った実績はほとんどなく、むしろ失敗が多かったと示唆して、中国トップに立った習主席を「ミスター間違い」と揶揄(やゆ)している。

 では、なぜそんな習主席が国家トップまで上り詰められたのか。それは習主席が属してきた「派閥」が中央の権力を掌握したからと、蔡霞氏は示唆する。