米国の人気ビジネス書著者のマルコム・グラッドウェルの著書『天才! 成功する人々の法則』には、「1万時間の法則」という言葉が出てきます。モーツァルトやビル・ゲイツなどを例に挙げ、成功するには1万時間以上の多大な時間をつかい、努力を重ねる必要があるという主張をしています。

 本の中では、フロリダ州立大学の心理学者・エリクソン教授の調査が注目されています。音楽アカデミーで国際的に活躍するバイオリンの生徒とそれ以外の生徒で、バイオリンを始めてからの練習時間について調べてみると、前者は約7300時間、後者は5300時間だったというものです。この結果から、ある分野で実力があるとされている人は、その分野に対して使ってきた時間の量が圧倒的に多いことが導き出されました。

東大卒ママがつく優しいうそ。子どものやる気と能力を伸ばす、プラスの「ラベリング」杉山奈津子(すぎやま・なつこ)1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつ病によりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた!「捨てる」記憶術』など多数。最新刊は『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』。静岡市で少人数制塾「杉山塾」(http://fancynancy.jp/sugiyamajuku/)を運営中。ツイッターのアカウントは@suginat

能力を伸ばすには、時間をかけて頑張ることも必要

つまり、「自分はできない」と早々にあきらめて時間を使うのをやめるのではなく、できないからこそ「時間を使ってできるようにしよう」という考え方のほうが、理にかなっているわけです。

 私は、学生時代かなりの運動音痴でしたが、息子には「ママはすごく走るのが速かったんだよね」「泳ぐのも上手だったんだよね」と話しています。我ながらうそつきだなぁ、とは思いますが、それで息子が「じゃあ自分もできるんだ」と思って苦手な運動を頑張ってくれるなら、それでいいと考えています。

 能力を伸ばすために「自分ならできる」と信じ、時間をかけて頑張ることで、本当にできるようになっていくのだと思います。

AERA dot.より転載