特定のマンションの価格推移を追うと
正確な価格変動率を知ることができる

 この手の数字の正確性を高めるには、多面的に検証することが求められる。そこで今回は、特定のマンションの価格推移を追うことで、正確な価格変動率を探っていきたい。

 この手法のメリットは、同じマンションを分析対象にしているので、立地や築年数などの物件属性を補正する必要がなく、少ないサンプルでも正確性を担保できることだ。

 サンプルの関係で、対象エリアは札幌市・愛知県・岡山県・広島県・沖縄県とした。対象としたマンション名は伏せるが、各エリアでいくつか物件を選んで価格推移を分析すると、中古成約価格は2013~21年の8年間で平均33%増となった。

 ただし、築年数が8年増えることで、通常はマンション価格が16~24%ほど下落する。上記の平均33%増という増加率は、この価格減を反映した数値だ。時間がたってもマンションの価値が変わらないと仮定した「実質的な価格上昇率」は約50~60%増となる。

 2010年比でも価格上昇率は70%を超えておらず、国交省の不動産価格指数よりも低い。

 私の試算では、対象の5エリアの中で最も価格上昇しているのは札幌市・沖縄県(いずれも43%増)で、上昇率は首都圏並みであった。

 一方、最も伸び悩んでいるのは名古屋市を抱える愛知県で、8年間の伸び率は12%。2010年比でも4割程度しか値上がりしていなかった。不動産価格指数の約8割増は実感値と大きくかけ離れていることになる。

 そうなると、やはり国土交通省の不動産価格指数は実態を説明できていないので、首都圏・近畿圏以外は信用できそうにない。この数値を信じて、売却を前提として地方マンションを購入すると利益の少なさにがっかりするかもしれない。