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「AWSと開発者のコミュニティによって、IT部門を持たない中小企業が、大企業に遅れを取ることは、もはやない」――ヴァーナー・ボーガス/アマゾン・ドットコムCTOに聞く

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第22回】 2013年2月5日
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2006年にアマゾン・ドットコムは、オンラインストアのバックエンドとして構築してきた情報システムの余剰能力を、開発者向けに商用提供することを始めた。それ以降、年を追うごとに、その用途のために提供するキャパシティも機能も増え続け、文字通りクラウドコンピューティングという新しい世界の最前線を、加速度をつけて走り続けている。その勢いの源泉にあるのは、顧客至上主義ともいわれる同社の理念と、高い技術力に根差したイノベーションだ。「アマゾン ウェブ サービス」(AWS)で中心的役割を担うアマゾン・ドットコムCTO(最高技術責任者)のヴァーナー・ボーガス氏に、AWSがもたらした変化と今後の展開について話を聞いた。

企業がAWSを選ぶ理由

――アマゾンのクラウドサービス、「アマゾン ウェブ サービス」には、すでに世界190カ国に数10万のユーザーがいるという。ただ、現在はCRM(顧客管理アプリケーション)をクラウドで提供するセールスフォース・ドットコムなど、さまざまなアプリケーションレベルでのクラウドサービスも多くある。その中で、企業がAWSを選ぶ理由はどこにあるか。

Werner Vogels
アマゾン・ドットコム バイス・プレジデント兼CTOとして、同社のグローバルなテクノロジー・イノベーションを担当する。アマゾンに加わる前は、コーネル大学の研究者として、企業向けコンピュータシステムの性能向上に関する研究に携わり、また複数のテクノロジー関連企業でテクノロジー担当副社長やCTO職を務めた。オランダ自由大学で博士号取得。
Photo by Noriko Takiguchi

 クラウドによるアプリケーション提供のサービスは、AWSと競合するわけではなく、補完関係にあると思ってもらいたい。セールスフォースは、特に日本ではトヨタとコラボレーションするなど、優れたビジネスを展開しているが、こうしたSaaS(クラウドサービスとしてのソフトウェア)もAWSを利用できるのだ。CRMのサービスをクラウドで提供する会社も、ERP(統合基幹業務システム)のサービスを必要とし、それらがAWS上で走るという図式だ。

 つまり、一方にインフラがあっても、他方ではそれをサービスとして利用可能なかたちにする必要がある。IT部門であれ、事業部門であれ、自分たちの仕事に役立つかたちは何かを常に考えているだろう。そうした中で、ある部門がすでにSaaSを利用していても、社員が使う新たなモバイル・デバイスをサポートするような必要が生じた時に、その部分をAWSに頼るということも考えられるのだ。

――つまり、企業は細切れにAWSを利用することも多いのか。

 従来ならば、CIOは常にコストカットの必要性に迫られていて、高度な処理能力を手早く獲得するようなことはできなかった。設備投資を先行して行う必要もあっただろう。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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