「海運界・伝説の名社長」が陥った罠、老舗・第一中央汽船はなぜ倒産した?写真はイメージです Photo:PIXTA

今回は、2015年9月に経営破綻した老舗海運会社「第一中央汽船」を取り上げる。創業から120年超、商船三井グループの一角を担った同社は、なぜ倒産に陥ったのか。その裏には、「海運界の伝説の男」と呼ばれた敏腕社長が陥ったワナが見えてくる。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

創業120年超の老舗海運会社
第一中央汽船の経営破綻

 今回は、老舗海運会社である第一中央汽船の倒産事例を取り上げる。

 第一中央汽船は1892年(明治25年)に別子鉱山(後の住友鉱業株式会社)の貨客運送を行ったことから始まる老舗海運会社である。使用している船舶数は、ピーク時の2013年3月期には235隻に上っていた。これは、日本郵船、商船三井、川崎汽船といった海運大手三社に次ぐ規模である。

 また、第一中央汽船は商船三井の関連会社でもあり、15年3月末時点において、商船三井は第一中央汽船の議決権の約17%を所有していた。

 しかしながら、創業120年を超え、商船三井グループの一角でもあった同社は15年9月に民事再生法の適用を申請することとなる。その原因は何だったのか。02年3月期から倒産直前の最後の本決算期である15年3月期の決算書データとともに探っていこう。