高級喫茶店「椿屋珈琲館」やライトフードレストラン「ダッキーダック」などを経営する東和フードサービス。接客重視のパチンコ「UNO」、カラオケルーム「ラミューズ」などレジャー事業を行なう東和産業など東和ジェイズグループは、岸野禎則が創業して育て上げた。バブル崩壊の荒波を間一髪で切り抜け、33年連続増収だったが、ここにきてデフレとリーマンショックによる不況が直撃した。
ロジック組立て、
仮説・実行・検証で成長
東和産業会長・東和フードサービス社長 岸野禎則 |
岸野禎則が起業したのは、大学卒業後、日本ビクターに勤務、4年半のビジネスマン生活の後だった。当時はサイホンコーヒーが流行するなど喫茶店の勃興期だった。両親が小さな喫茶店をやっていたこともあり、喫茶店なら簡単にできると考えてスタートしたのが「コーヒーハウス」1号店で、1974(昭和49)年のことだった。
岸野はすぐにチェーン展開を始める。当時はチェーン展開をしていたのは居酒屋くらいで、そういう発想の少ない時代だった。しかし、時代が少しずつ変わり、学生が外食するようになってきた。そうした状況を契機に、ケーキやパスタを提供しようと考えたのだが、コックは軽食をバカにして集まらない。
そこで当初、新橋の店の片隅をケーキ工場にして、素人同然の職人に作らせた。職人たちには「技術がないのだから、一番いい材料を使っていい」と指示した。79(昭和54)年には、両国にセントラルキッチンを稼働させている。
そして83(昭和58)年には、明るく洗練された雰囲気のライトフードレストラン「ダッキーダック」と、若い女性が気軽に入れるお好み焼・鉄板焼の店「ぱすたかん」をオープンさせる。
岸野の経営の特徴は、ロジックを組み立てるところにある。時代の変化を敏感に感じ取り、顧客が望んでいるメニュー、雰囲気、接客、価格、店舗レイアウトなどでロジックを組み立てる。そして仮説・実行・検証を繰り返す。
例えば高級喫茶店。日本人は大正ロマンに憧れる。そこで大正ロマンの雰囲気にこだわったゆとりとくつろぎの「椿屋珈琲店」、「面影屋珈琲店」などを出店する。コーヒー1杯880円と高いが、ここでは顧客の30%が2時間以上滞在している。1分あたりにすると、ドトールコーヒーより安い計算となる。顧客もそのことをよくわかっていて、席が空くのを待つ列ができる。そういう顧客のために、夏は汗取り紙を、冬はホカロンを渡している。