ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

金融政策と実体経済の結びつきを強めるために
――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第89回】 2013年2月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

ついに導入された
「2%」の「物価安定の目標」

 先月21~22日に開かれた金融政策決定会合は、国内外の市場から注目された。同会合のポイントは、①「2%」の「物価安定の目標」(英語ではtarget)を導入、②「期限を定めない資産買入方式」(以下、オープン・エンド型買入)を2014年に導入、③政府・日銀の「共同声明」という形で物価安定の目標を「できるだけ早期に実現する」ための両者の役割を明示、の3点にある。

 なかでも「2%の物価安定の目標」は、安倍首相が再三導入を求めていたものであり、今回の決定会合の最大の目玉となった。

 ただし「2%」に目標を設定することに対して、2名の審議委員(木内氏、佐藤氏)が反対した。理由は「2%は持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率を大きく上回る」、「成長力強化の前の物価目標の明示は金融政策の信認を毀損させる」の2点。さほどに「2%」というのは野心的だ。

 今後の焦点は同目標の実現性に移る。日本の金融政策については、「どれだけ緩和するか」と同時に、「どのように緩和が効く経済をつくるか」も問われる。

 実際、日本では金融緩和が実体経済を刺激する上でいくつかの障壁がある。以下では、米国と比較しながら「潜在成長率(自然利子率)の低さ」と「労働市場の流動性欠如」の2点を見ておこう。この障壁を取り除く上で、政府が果たす役割は大きい。

第一の障壁:
低迷する日本の潜在成長率(自然利子率)

 第一に、低迷する潜在成長率が挙げられる。潜在成長率は理論的な厳密性を無視すれば、当該国の「自然利子率」に相当する。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

⇒バックナンバー一覧