ヤマト運輸が新潟県で地域活性化、無印良品の移動販売や東京で産地直送物産展もヤマト運輸「ネコサポステーション永山」における新潟県津南町の物産展(写真提供:カーゴニュース)

災害時対応や地域の見守りなどで、宅配会社をはじめとする物流企業と地方自治体が協力する「地域包括連携協定」の締結が各地で増えている。一方で、連携の中には協定を締結したものの、実際には具体的な活動がないまま時が過ぎているようなケースも少なくない。そうした中、ヤマト運輸長岡主管支店と新潟県津南町では2022年6月の包括連携協定以降、様々な地域活性化施策が実現しており、物流企業と地域の“一歩進んだ”連携として注目されている。(カーゴニュース)

*本記事はカーゴニュースからの転載です。

良品計画との3者連携や
物産展、抗原キット配送も

 ヤマト運輸長岡主管支店と新潟県津南町は2022年6月1日、ヤマト運輸として新潟県初の地域包括連携協定を締結した。津南町は新潟県中越地方に位置する人口9000人ほどの町で、畑作を中心とした農業が産業の中心。連携協定では、(1)住民の安全・安心な暮らしの実現(2)地域経済の活性化(3)町の情報発信――の3項目に取り組むこととし、同日津南町役場で開かれた締結式には桑原悠町長と大澤正之・長岡主管支店長が出席して協定書に調印した。

 その上で、具体的な取り組みとしてまず始まったのが、良品計画の移動販売バス(通称「無印バス」)の誘致だ。同社は隣接する上越市に国内最大の旗艦店舗「無印良品直江津」を構えており、同所から食材や衣料品、古本などを積んだ「無印バス」が11月19日、ヤマト運輸の津南営業所にやってきた。津南町に良品計画の店舗はなく、移動販売バスには長蛇の列ができた。

ヤマト運輸が新潟県で地域活性化、無印良品の移動販売や東京で産地直送物産展も津南営業所に来訪した「無印バス」(写真提供:カーゴニュース)

 良品計画も22年9月に津南町と連携協定を結んでおり、地域活性化策の一環として同社とヤマト運輸、津南町の3者が協力して実現した。今後も月1回程度の運行を構想しているという。無印バスが訪れたヤマト運輸津南営業所も22年10月にリニューアルオープンしたばかりの新施設で、地域のコミュニティ施設としても活用していく。

 続いて、同月25日にはヤマトが東京都多摩市に構える「ネコサポステーション永山」で「にいがた津南雪国物産展」を開催。長岡主管支店から津南町に提案し、町の仲介で出店者を募って町内の5社が野菜やきのこなどを販売した。輸送にはヤマト運輸らが提供する「JITBOXチャーター便」も利用した。

 1日のみの開催だったが売上は想定の2倍近くに上り、東京に住む津南町や新潟県の出身者も足を運ぶなど、交流の場にもなった。同所ではこれまでも、ヤマト運輸の北海道支社と連携した北海道物産展など行ってきたが、町単位の物産展は今回が初めて。“大成功”となった結果を受け、次回は23年2月に、開催日を3日間に増やして実施する予定だ。

 さらに、12月からは新型コロナの感染が疑われる町民に無料配布する「抗原検査キット」の宅配も担当。投函型輸送サービス「ネコポス」を利用し、午前中の申し込みで即日自宅に届く。従来は町職員が自ら配達していたが、ヤマト運輸への委託で作業負荷を大幅に削減でき、感染の再拡大が懸念される中、町民に対して無料配布の告知を行うこともできたという。