従業員が倒れて「減員厳重」、
しかし「39℃以下なら勤務せよ」

 話を聞かせてくれたのは、葬儀場に勤務の男性・呉輝さん(仮名、40代)と李海辰さん(仮名、40代)、大学付属病院で看護師として勤める女性・段玲さん(仮名、30代)、そして彼らの職場の友人数人である。

「ここにいる全員、(コロナに)感染したよ、ハハハ……」

 オンライン新年会はそんな全員の笑い声から始まった。「今でこそ笑えるが、その時は死も覚悟した。うちの病院の職員の9割が感染した。病棟がいっぱいになったのはいうまでもなく、病院の入り口や廊下まで発熱患者であふれていた。簡易ベッドや点滴用の椅子で埋め尽くされ、病院中、足の踏み場もない状態。これだけ患者がどんどん増えている一方で、スタッフは厳しい減員となった」(段さん)

 「減員厳重」――。これはゼロコロナ政策が緩和されて以来、中国でよく使われていた言葉である。つまり、爆発的に拡大した感染で従業員がバタバタと倒れ、働き手が極めて足りなくなった状況を指す。

 このような状況下、国家衛生健康委員会(衛生と健康を担当する政府機関)は、「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた。

 そのため、「せき込む人や熱で真っ赤な顔をしている人、点滴の管をつったままの人など、極限状況で同僚たちは働き続けた。突然失神して地べたに倒れた人もいた。今思えば、まるで地獄だった」と段さんは振り返る。

39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて
38℃の患者を迎えに行く

 中国のSNSでも、この話はブラックジョークの形で拡散されていた。「熱が39℃の救急車のドライバーが、38.5℃の医者と看護師を乗せて、38℃の患者を迎えに行っている」というのだ。そして、多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意するのだった。

「この3年間、まともな休日はなかった。最長だと4カ月間1日も休めない時もあった。そして、ずっと防護服のままだった。病院内だけでなく、1年の半分以上はあちこちのPCR検査に出張した。そこでももちろん終日防護服。できるだけトイレへ行かないように、食事や水を極力控えめにしていた。ダイエットにはちょうどいいかもしれないね」と段さんは苦笑しながら話す。