神ゲー『ブレワイ』の正統後継作
今作『ティアキン』が発売前から注目されたワケ

『ゼルダの伝説』シリーズは、タイトルごとにトーンやテイストが大きく変わる特徴があるが、『ティアキン』は、前作にあたる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下『ブレワイ』)をベースに制作された、『ブレワイ』の正真正銘の続編である。
 
 そもそも『ティアキン』がなぜそれほど注目されていたかというと、前作『ブレワイ』がゲーム史に語り継がれるべき名作中の名作だったからだ。プレーした人の日常にまでワクワクをもたらして輝きを取り戻させるような、異次元のクオリティーであったのだ。
 
『ブレワイ』は、広大なフィールドを隅々まで自由に駆け回れるのがウリで、「ただの風景に見える遠くの山も近づけば本当に登れる」という現実に近い肉感的な手応えがあった。「風景は風景。アンタッチャブル」として、従来のゲームの常識に慣らされてきたプレーヤーたちに強い衝撃を与えた。
 
『ブレワイ』をプレーした大人たちは、現実世界でも、車窓に映る遠くの山を「登れる」という目で見るようになり、そう再発見した自分に感動した――。そんな内容のユーザーレビューが、Amazonに投稿され、当時多くの共感を呼んだ。ちなみにAmazonでそのレビューは5万人近くのユーザーに「役立った」と評価されている。
 
『ティアキン』は、そんな前作『ブレワイ』の基本的なシステムやマップはそのまま、いくつかの新要素を加えて開発されたとのことであった。とすると、誰もが期待するのは「『ブレワイ』の、あのワクワクを!」である。
 
 しかし前述の通り、すでに『ブレワイ』が「これ以上ない」というほど面白かったから、『ティアキン』は「もう一度『これ以上ない』を提供せねばならない」という、最大限の期待を背負わされている宿命にあった。そんな高すぎるハードルは越えられないのが普通であって、『ティアキン』をプレーして落胆するのが、『ブレワイ』ファンの筆者などは怖かったわけである。