実は会見でやりがちな「うっかり普段の気持ちを吐露」

 さて、そこで最後に気になるのは、なぜジュンさんがこういう会見をしてしまったのかということだろう。

 つまり、「子どもを守る会見」と自分で目標設定しておきながら、広末さんの「過去の不倫」や「心の不安定さ」を暴露するという、矛盾した行動を取ったのかということである。

 これから来るべき離婚協議で、親権や財産分与を自身に有利に進めるため、という見方もあるかもしれない。しかし、あのマイペースな会見と、実直な雰囲気を見る限り、そのような策士的な人ではないと感じた。

 となると、「普段から思っていたことを、うっかり吐き出してしまった」のではないかと、個人的には思う。実は会見ではこういうことがよくある。

 例えば、健康被害が出るような品質事故を起こした企業が会見を開くこととなった時のエピソードを紹介しよう。筆者は報道対策アドバイザーとして立ち会い、会見の目的を、「被害者の救済に全力を注ぐことを社会に伝える」と設定し、そこから逆算する形でメッセージや想定回答を作成した。

 そして本番、登壇した社長は当初は、筆者のシナリオ通りに話を進めていたのだが、記者からの質問を受けているうちに、「被害を訴えている人の中にはお金目当ての怪しい人もいる」とか「本当に当社の製品のせいなのか因果関係はまだはっきりしていない」などと、筆者が作成した回答にないことをアドリブで口走ってしまったのである。

 会見終了後、ご本人は「なんであんなこと言ってしまったのか」と悔やんでいた。ただ、こういうことはよくある。被害者を軽視しているとかではなく、経営者として「企業防御」が骨の髄まで染み込んでいるので、うっかり本音をこぼしてしまうのだ。

 ジュンさんもそのクチではないかと思う。

 子どもたちをこれ以上、傷つけたくないという思いは本当だろう。だが、一方で、夫婦には夫婦間でしかわからない感情のもつれもある。きっと広末さんに対していろいろと言いたいことを溜め込んでいたのだろう。その不満があのような形で、スポットライトを浴びたことで一気に爆発してしまったのかもしれない。

 いずれにせよ、今回、メディアは広末さんを叩きすぎだ。不倫を叩けば、数字が稼げるというのはよくわかるが、ちょっと度を超えている。ましてや広末さんは心が不安定だというではないか。「最悪の事態」が起きる前に、メディアは不倫報道のガイドラインも整備した方がいいのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)