写真:金融庁の看板Photo:PIXTA

新NISAが来年からスタートするのを前にして、金融業界では「利益相反」の気配が漂っている。本来であれば金融庁が責任を持つことがふさわしい分野で、そのような事態が起きている。金融庁は「逃げた」のだろうか?(経済評論家 山崎 元)

金融教育の
「司令塔」はどこだ?

 金融教育に関する動きが遅いように思われる。もちろん、各方面で金融教育の試みが始まっているので、現場で努力されている関係者には申し訳ないのだが、これなら期待できそうだという進展が乏しい。

 2022年には、高等学校で正式に金融経済教育がスタートしたので、昨年に「金融教育元年」的なイメージを持ったのだが、成果が見えてこない。もっとも、「週刊金融財政事情」(6月20日号)の記事「どうなる日本の金融経済教育」によると、政府、日本銀行はペイオフ解禁となった05年を「金融教育元年」と位置付けているとのことだ。

 恥ずかしながら、筆者はこのことを記事で初めて知ったが、この時以来の年月は金融教育が政府のかけ声だけでは進展しないことを雄弁に物語っている。

 昨年は、24年から施行されるいわゆる新NISA(少額投資非課税制度)の内容が決まり、非課税制度としての規模や内容において当初の期待以上のものになったと筆者は評価している。しかし、新制度が来年に始まることが決まっていて、ビジネス的には金融機関の顧客獲得競争が始まっているにもかかわらず、国民の金融リテラシー改善を後押しするはずの金融教育について、具体的な内容と推進体制がはっきりしない。