安倍元首相支持の保守層に異変、解散判断の難易度がさらに上昇マイナンバー情報総点検本部の初会合で発言する首相の岸田文雄。健康保険証を廃止してマイナカードへ一本化する方針に対する中高年層の反発は非常に大きい Photo:JIJI

 予想通りの結果といっていい。岸田文雄内閣の支持率急落のことだ。6月26日の朝刊2紙の数字は衝撃的だった。読売新聞の支持率は前回の5月調査から15ポイント下落して41%。逆に不支持率は11ポイント増の44%。再び支持と不支持が逆転した。日本経済新聞も8ポイント低下して39%(不支持率51%)。この2紙より一足早く調査した毎日新聞、産経新聞、共同通信も同様な傾向を示し、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で上昇した内閣支持率は約1カ月で消失した。

 下落の原因は明確だ。政府が導入を急ぐマイナンバーカードを巡るトラブルに対する拭い難い不信感に起因する。健康保険証を廃止してマイナカードへ一本化する方針に対する中高年層の反発は想定以上のものがある。マイナカードのトラブルに関し、岸田は省庁横断の「情報総点検本部」を設置して対処する考えを示した。

「健康保険証廃止に対する国民の不安を重く受け止める。全面廃止は国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提だ。最大2025年秋までの期間を活用し不安を払拭していく」

 だが、岸田は来年秋にマイナ保険証へ一本化させる政府方針に関しては「変更はない」とも語った。方針転換の絶好のタイミングを逃したかもしれない。国民感情はその先を行っているからだ。共同通信の調査によると、「廃止延期」が38.3%、「廃止を撤回するべきだ」が33.8%。つまり7割以上の人が政府方針の変更を求めている。

 ここまで国民の声がそろえば、政治的には保険証については「廃止の撤回」しかないだろう。それでもデジタル相の河野太郎は25日、改めて方針貫徹を表明した。

「迷惑を掛けおわびする。立ち止まるのではなく、問題を解決して前に進めたい」

 過去にも自民党は持ち主不明の年金記録など国民生活に直結する問題で、国民から選挙で手痛いしっぺ返しを受けてきた。自民党支持率も3~5%の範囲で低下している。通常国会の会期末に一時的に機運が生まれた衆院解散も、秋に仕切り直しという状況ではなくなってきた。むしろ年内も難しいだろう。