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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

孫への非課税贈与
消費の起爆剤に化ける再設計を
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第90回】 2013年2月27日
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孫への教育資金の贈与非課税は
「素晴らしい仕組み」になり得る

 みなさんは、祖父母から通学用かばんをプレゼントされた経験をお持ちだろうか?

 通学用かばんの消費総額の4%は、60歳以上の祖父母が孫のために購入したものだ。だから、25人に1人くらいは祖父母から買ってもらっている計算になる。孫のために高齢者が使っている金額は、孫のためと特定しやすい内容に絞って計算してみると、年間約1.6兆円にも及ぶと推定される。

 主な対象は、給食費、子ども服・制服、教育費、学用品である。玩具は厳密に区分して計算できなかったので外したが、実際はそれを加えて1.6兆円以上になろう。高齢世帯のうち、高所得・高貯蓄、そして勤労を続けている世帯ほど、孫のための消費に熱心である。

 こうした孫への利他的消費をどんどん増やすように支援すれば、きっと景気刺激効果も大きいはず、と考えるのは筆者だけではあるまい。2013年の税制改正大綱では、孫への教育資金の贈与を非課税にするアイディアが盛り込まれた。年初1月に、このニュースを聞いたとき、筆者は素晴らしい仕組みができそうだと興奮したのを覚えている。

 おおまかな仕組みは、直系尊属(子と孫)への教育資金の一括贈与について、1人当たり1500万円の非課税枠を設ける。1人の祖父母に3人の孫が居れば、一括贈与で4500万円の教育資金贈与信託に資金を移し、その金額には相続税・贈与税がかからない。親は、孫のための教育資金を受け取って、教育費負担を大きく増やせる。

 この税制は、相続税の基礎控除額が4割縮小されたとしても、贈与の非課税枠を拡大させることを通じて、高齢者の相続税対策に道を拓く。同時に、孫の教育費援助、イコール子どもの教育資金の肩代わりにもなっていて、その効果は絶大だ。

 少子化の背景には、親の経済力が乏しくなることで、若い夫婦が子供を持とうとしないことがある。わが国の若者たちの能力形成は、企業が若者たちに社内教育投資を手控え、新卒採用を抑制してきたことで、かつてよりも著しく低下しているようにも思う。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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