やってはいけない!相続&生前贈与#15Photo:PIXTA

遺産にまつわる家族間の諍いを未然に防ぐには、遺言書を書くのが一番だ。しかし、遺言書も万能ではなく、内容によっては効力を発揮できないほか、逆に争族を引き起こす可能性もある。特集『やってはいけない!相続&生前贈与』(全16回)の#15では、失敗しないための遺言書の「正しい」書き方のポイントを解説する(ダイヤモンド編集部 野村聖子、監修/税理士法人弓家田・富山事務所代表社員 弓家田良彦)

「週刊ダイヤモンド」2023年7月15日・22日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

争族回避&円満相続のための
遺言書の正しい書き方

 争族回避の手段として必須なのが遺言書だ。しかし、遺言書を書けば万事解決というわけではない。その効力を発揮するためには、法で定められたルールに従って書かなければならない。

 そればかりか、内容によっては新たな火種を生むことにもなりかねない。遺産争いを未然に防ぐために残した遺言書が争族を招いては本末転倒だ。では円満相続のため、遺言書を残す上で大切なことは何か。まず、遺言書を法的に有効とするための知識は必須となる。

 遺言書には、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類がある。

 自筆証書遺言は、その名の通り被相続人となる人物が自分で書いたものだ。メリットは何といっても費用がかからないことだが、自分の死後遺言書が発見されずに終わってしまう恐れがあること、そして未開封の状態で家庭裁判所で検認を受けなければ法的に有効とはならない点がデメリットだ。偽造・変造の可能性も否定できず、時には信ぴょう性を巡って裁判で争われることもある。

 一方、公正証書遺言は、公証人役場に赴いて遺言者がその内容を公証人に口頭で伝え、2人以上の証人の立ち会いの下、公正証書で作成する。費用がかかること、遺言の内容を公証人たちに知られてしまうことがデメリットだが、遺言は公証人役場で保管されるため、紛失や破棄、また偽造や変造の可能性はなく、家庭裁判所の検認も必要ない。書き方の誤りで無効な遺言になることもなく、法的な有効性を担保するために最も確実なのは公正証書遺言だろう。

 しかし2020年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が開始。この制度で、前述したような自筆証書遺言のデメリットはほぼ解消された。ところが、公証人が作成する公正証書遺言と異なり、法務局では遺言の中身が法的に有効か否かはチェックしてくれない。遺言書の内容に問題があってもそのまま保管されてしまう。

 次ページでは、正しい遺言書の書き方の見本や争族回避のために留意すべきポイント、死後に遺言書が無効とならないための万全の対策について解説する。