スマホを持つ軍人写真はイメージです Photo:PIXTA

韓国の男性にとって、兵役は人生の一大事である。10~20代の数年間を強制的に軍隊で過ごすことになるわけだが、昔と比べると期間が短くなり、給料もアップ、暴力行為やパワハラが改善されるなど、格段に待遇が良くなっている。なぜ、どのように待遇が変わったのか、最近の変化を紹介する。(韓国在住ライター 田中美蘭)

 昨年、高い人気を博したNetflixの韓国ドラマ「D.P.-脱走兵追跡官」。このドラマが「シーズン2」として帰ってきた。これは実話を元にしたドラマで、主人公は、過酷な兵役生活に身を投じる中で逃亡した兵士を追跡調査する部隊に配属される。主人公は脱走兵の追跡を行っていく中で、パワハラや暴力、自殺など数々の“闇”に直面する。このストーリーは、韓国だけでなく日本でも話題を呼んだ。

 韓国の若者たちに課せられた兵役生活については、どうしてもネガティブな印象が強いことが否めない。また、芸能人やスポーツ選手にとってはキャリアを中断して行くことへの葛藤や苦悩も多く、BTSの兵役問題が議論されてきたことでも分かるように、とにかく韓国の男性にとっては人生の一大事と言っても過言ではない。

 しかし最近は、そんな印象を覆すかのような変化が見られるという。本記事では、最新の韓国兵役事情について見ていきたい。

「安心して入隊してください」
私物の携帯電話も使用可能に

 筆者の友人の息子が最近、入隊した。大学1年生の彼は満19歳になるとすぐに兵務適性検査を受け、現役兵役適性者として1級判定を受けた。通常は、招集の時期を待って入隊するのだが、彼は陸軍の募集兵に志願して、早々と入隊することが決まった。

 18カ月の兵役期間、まず入隊時には訓練兵として5週間の基礎訓練を受ける。その後、配属先が決まって振り分けられる。各部隊では最初は二等兵からスタートして、徐々に階級が上がり、最終的には兵長となる。

 前出の彼はある日、彼の叔父から電話をもらった。彼の叔父は職業軍人で、入隊を控えた彼に「近年は過去に起きた部隊内での問題を鑑み、特にコンプライアンスの強化に努め、何か問題があればすぐに対応する体制を整えている。安心して入隊してほしい」と言っていたとのことだ。

 加えて、例えば配属された部隊の任務が自分に適していない、難しいと感じた場合は、上官と面談の上、他の部隊への変換も可能である、と話していたという。一口に兵役の部隊と言っても、北朝鮮との最前線での任務もあれば、通信、広報や運転、夜間警備や軍事警察など、働く場所も内容も実に多種多様だからだ。

 こうした話を聞くと、かつてと比べて、兵役兵への配慮が大分されるようになっていると感じる。確かに別の友人も、「兵役期間中の息子が所属する部隊のコミュニティサイトに写真がアップされるので、部隊の雰囲気や息子の様子を見ることができ、安心感がある」と話していた。また、2019年からは一日の任務終了後に、部隊内で携帯電話の使用が許可されるようになり、家族や友人、恋人との連絡手段も格段に向上した。

 秋に入隊を控えている男性は、兄から兵役の話を聞いたものの、特に不安になるようなことはなく、今は入隊までの時間でアルバイトをしたり、旅行をしたりして過ごしているという。