セルティック残留を決めた古橋の
今後の「やりがい」とは?

 アスリートならば誰でも、より高いレベルに挑戦したいという思いを本能的に抱く。古橋もおそらく例外ではない。一方で海外へ挑戦する日本人選手が相思相愛のクラブと巡り合え、ファン・サポーターから深い愛情を注がれ、常に熱狂的な後押しを得られる確率は決して高くない。

 プレーをしていく上で理想的な環境で、古橋は常勝の目標を追い続けられる。ましてやセルティックではヨーロッパ最高峰の戦い、UEFAチャンピオンズリーグへ毎年のように挑戦できる。セルティックでさらに数字を伸ばしていく決断も、ある意味でステップアップと同義語になるかもしれない。

 かつて2シーズン連続でセルティックを国内三冠に導いた、北アイルランド出身のブレンダン・ロジャーズ監督が4年ぶりに復帰したセルティックは7月に日本ツアーを実施。19日の横浜F・マリノス戦で4-6と逆転負けを喫し、22日のガンバ大阪戦では1-0で辛勝した。

古橋亨梧「セルティックと契約延長」の真意を深読み、強豪移籍の“条件”とは?セルティックに復帰したブレンダン・ロジャース監督。英プレミアリーグのリバプールやレスター・シティでも指揮官を務めた敏腕だ(撮影:藤江直人)

 しかし、古橋は2試合ともに後半からの途中出場。1トップにはポステコグルー体制では左ウイングを主戦場としていた前田が指名され、マリノス戦では前半だけでハットトリックを達成した。

 昨シーズンまでの古橋は、最前線で相手の最終ラインとさまざまな駆け引きを駆使。自慢のスピードを生かして一瞬の隙を突いてゴール前のスペースへ飛び込み、ワンタッチでゴールを陥れてきた。

 対照的に新指揮官は、前田を含めて1トップに新たな役割も求める。ポジションを下げて味方からのボールを引き出し、相手を背負いながらパスの出し手も担う。もちろん昨シーズンまでの裏へ抜ける動きも欠かせない。新体制下で古橋も試行錯誤を強いられている。

 それでも不完全燃焼の結果に終わったマリノス戦後に、古橋はこんな言葉を残している。

「普段の練習から切磋琢磨を続けて、みんなで力を合わせながら成長していくなかで、監督に選ばれた選手が試合でいいプレーをしていく。僕としては、常に最高の準備をしていきたい」

 8月5日には新シーズンが早くも開幕する。9月からは昨シーズンは2分け4敗と一つも勝てず、古橋自身も無得点に終わったチャンピオンズリーグも始まる。契約を延長した際に、古橋はクラブの公式ホームページで「来シーズンも目標は変わりません」とあらためて抱負を語っている。

「まずは3つのタイトルを守る。そして、チャンピオンズリーグに出場できることにいまから興奮しています。個人的な目標はより多くのゴールを決めて、チームの勝利に貢献することです」

 モットーを問われれば「笑顔」と即答する古橋は、愛くるしさとピッチ内で見せる謙虚かつ献身的な姿勢、何よりもゴールという結果でファン・サポーターのアイドルになった。契約を延長したいま、快足ストライカーはセルティックのレジェンドになる戦いへ、気持ちも新たに挑もうとしている。