厳しさ増すロシア経済、ヒト・モノ・カネの流出は増加

 7月21日、ロシア中銀は年末のインフレ率の予測レンジを、6月までの4.5~6.5%から、5.0~6.5%に修正した。ロシア中銀は、追加的なルーブルの下落によって輸入物価が押し上げられる展開に警戒を強めている。

 今後、インフレ懸念を抑えて物価の安定を図るため、中銀は追加の利上げを実施する可能性は高い。今回同様、予想を上回る大幅利上げも排除できない。

 利上げによって経済の厳しさは増す。金利上昇で、家計や企業の借り入れコストは増加し、個人消費や設備投資などは減少する。ロシアの財政悪化懸念も高まる。貿易面では、中国経済の持ち直しペースがかなり弱いため、ウラル産原油などの輸出ペースも徐々に鈍化しそうだ。

 一方、ロシアは日用品や自動車などの生産能力が十分ではなく、中国などからの輸入に頼らざるを得ない。海外への資金流出は増えるだろう。

 また、ロシアから脱出しようとする人も増えるだろう。22年、ロシアからフィンランドに移り住む人は6000人を超え、多くが亡命を希望していると報じられた。より自由、かつ安心、安全な環境を求めて他国への移住を真剣に目指す人は今後も増えるだろう。

 主要先進国では、ロシア撤退にとどまらず、ロシア企業との取引停止を検討する企業も増えるとみられる。外国為替市場でロシア関連のリスクを削減する投資家は増え、ルーブルの売り圧力は強まる恐れが強い。

 ロシアから海外へ、ヒト・モノ・カネの流出は増加する。それによって通貨安が進行し、輸入物価は上昇する。国内のインフレ懸念も高まり、社会心理が悪化する。そうした負の連鎖にロシア経済は向かっているようだ。中長期的には、経済の縮小均衡化も加速するだろう。インフレの上昇ペース次第でロシアは、戦争を続けることが難しくなるかもしれない。