ソフトバンクソフトバンク Photo by Masataka Tsuchimoto

家庭向けの節電サービスで国内最大の節電量を誇る、新電力大手でソフトバンク傘下のSBパワー。アプリを通じた個人向けコミュニケーションに長けており、節電量の多さにつながっている。長期連載『エネルギー動乱』では、元東京電力の超エリート幹部で電力業界の重鎮、中野明彦社長兼CEO(最高経営責任者)への全2回にわたるインタビューをお届けする。前編では、中野氏が大手通信会社傘下の強みを活かした仰天の経営戦略を明かす。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

節電サービスに120万世帯が登録
節電量で昨年度1801万kWh!

――全国的に冬は家庭の節電が盛り上がり、東京エリアを中心に今夏も節電がテーマです。

 ソフトバンクでんきを契約している世帯向けの節電サービス「エコ電気アプリ」の登録者数は、昨年末で120万世帯。われわれのお客さまの数は200万世帯ぐらいですので、これでもかなりの登録割合だと思いますが、もう少し増えればいいと考えていますダイヤモンド編集部注:SBパワーによると、節電量で2022年度1801万kWh。家庭向けの節電プログラムでは日本最多

 2023年2月から節電ランキングを表示するなど、少しでも「取り組みたいな」と思っていただけるような工夫を常にしています。関心をもっていただかないと継続してもらえません。一方、習慣化すればかなりの高い参加率につながります。

 ただ単に暑い時、寒い時だけではなく、本質的にはどう継続していただくかが大事だと考えています。この取り組みは節電・節約というとらえ方もありますが、省エネすなわちCO2(二酸化炭素)削減というとらえ方もあります。そうしますと本来、常時やらないといけない話です。家庭における省エネを浸透させることは簡単ではありませんが、昨年、良し悪しは別として、需給逼迫により国から節電の大号令がかかり、みなさんが関心を持つ機会にはなったと思います。

 その関心の高さをいかに継続するかは、われわれ事業者の責務だと思います。ただ単に「自社の電気が足りなくて困っているから節電してください、ピークを落としてください」ですと継続性はないと思いますので、地に足をつけて丁寧に、節電が習慣化するようにしなくてはいけないと考えています。

 環境省ともお話をしています。CO2削減は10年、20年単位の話です。中長期的にいかに効果を出してくかが大切です。

(エコ電気アプリを通じて)日々のお知らせをしたり、アンケートをとって改善したりして、われわれのお客さまの節電への参加率はざっと4~5割。これを5割以上に上げていくのが今の目標です。

 日々のお知らせの既読率は無料配信にも関わらず5割を超えますし、PayPayポイントを1ポイント差し上げているアンケートも定期的に行っていますが、驚くほど高い回答率になっています。

 われわれ自身も手を変え品を変え頑張っていますが、われわれがこの節電サービスを「節電チャレンジパッケージ」として提供している他の会社では、登録したお客さまの6割ぐらいが常に節電に参加しているところもあります。驚異的な数字だと思います。それぞれの会社で、良いコミュニケ―ションツールにもなっているのではないでしょうか。

――今夏からは中国電力も節電チャレンジパッケージを採用しました。

 旧一般電気事業者5社(中国電力の他に東京電力ホールディングス傘下の東京電力エナジーパートナー、東北電力、九州電力、北陸電力)、大手新電力1社(東邦ガス)が採用して下さっています。これら全てを合わせますと、ご利用いただいているご家庭は300万世帯にもなります。