元東電エリートの新電力大手トップが不祥事とは別の文脈で「送配電事業の再編はあっていい」と語る理由Photo:PIXTA

巨額カルテル事件の処分や送配電会社の顧客情報漏えい問題、規制料金の値上げなど2023年前半も大きな動きが相次いだ電力業界。長期連載『エネルギー動乱』では、元東京電力の超エリート幹部で業界の重鎮、中野明彦・SBパワー社長兼CEO(最高経営責任者)へのインタビューの後編をお届けする。中野氏が激動の電力業界を総括。規制料金の見直しに加え、送配電事業の分離も、不祥事の文脈とは切り離した上で「あっていい」と語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

規制料金は値上げしたが
「上げ幅が足りない!」

――大手電力7社が6月に規制料金(主に家庭向けの電気料金)を値上げし、時期を前後して新電力も値上げしています。

 旧一般電気事業者(大手電力10社のこと、以後「旧一」)の規制料金の価格水準が、競合するわれわれ新電力にとっては最大の関心事。6月に旧一の7社が一斉に値上げしましたが、われわれからすれば上げ幅が足りませんでした(ダイヤモンド編集部注:東京電力ホールディングス傘下の東京電力エナジーパートナー〈EP〉、東北電力、中国電力、北海道電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力が国の審査を経て、約15~39%値上げ)。

 規制料金の改定は、向こう3年間の原価を前提に計算します。そのため、今は動いていない原子力発電所も、来年動くといった織り込みをして原価計算することになります。つまり旧一としては、例えば1年目は赤字で電力を売っても、(織り込み通りに原発が稼働すれば)3年間で帳尻が合えばいいわけです。

 しかし、われわれ新電力は赤字で売るというわけにはいきません。

 どこから電力を買っても高い状況ですが、仕入原価に合わせた価格で売らざるを得ない。しかし繰り返しになりますが、一部の旧一は原子力発電所が動く前提で規制料金を改定しました。当然仕組み的に価格が低くなりました。結果、地域によっては、規制料金がもっとも安いという逆転現象が起きています。

 これはゆがんだ構造です。規制料金の在り方を議論すべきでしょう。