また、アイスブレイクも単にお天気の話をすればいいというわけではありません。いかにもおざなりの定型句という印象では、アイスブレイクの意味をなしません。また、アイスブレイクだからといってこちらから一方的に話すのではなく、むしろそれとなく相手が話しやすい話題を振って、口を開いてもらうということも大事になります。気持ちよく会話ができる環境づくりを進め、次のデモンストレーションに対する期待感をどれだけもたせられるか、この全体がアプローチです。

 次のデモンストレーションは、商品の実演と、その価値の提示です。セールスの中核をなす最重要の段階です。実演をスムーズに行うことは当然ですが、ここで重要なことは、商品がいかにすごいかという価値の一方的な提示ではなく、相手の困りごとに応える価値をもつモノだと明示することです。

 例えばスチームクリーナーを使ったエアコンなどの清掃の実演であれば、きれいになるのは当たり前であって「こんなにきれいになります」ということを示しても、相手には「それはそうだろう」という感想しか出てきません。

 顧客がエアコンクリーニングの何に問題を感じていたかをアプローチ段階で、あるいはデモンストレーションの準備などをしながら聞き出し、清掃によるベネフィットを具体的に示すことがデモンストレーションの価値を大きくします。

「こんなに強力で、こんなに簡単にきれいになります」ではなく「清掃によってこれだけ内部のカビが取れるので、室内の空気の汚れなどを気にされていると思いますが、空気中に浮遊するカビ菌や臭いの心配がなくなります。アトピーや喘息でお困りの方にも安心な空気環境になります」とか「内部の汚れが取れることで機械への負荷が減るんです。エアコンをほとんど一年中使うようになって電気代も気にされていると思いますが、しっかり掃除をすれば空調効率のアップや電気代の節約、省エネ、機械の長寿命化も期待できます」といったベネフィットを、顧客の関心に合わせて示すことが重要になります。

 それでこそ説得力のあるデモンストレーションになるのであり、単なる「効果の実証」「性能自慢」に終わってしまっては、せっかくのデモンストレーションも効果が薄いものにならざるを得ません。