訪問販売はその場の1回限りの勝負であり、顧客を長期的に育てていく視点はありません。1回の場のなかで入り口から出口までの段階を踏みます。しかし長期であろうと、1回であろうと、顧客の購買への決意が段階的につくられていくという意味で、その本質は変わりません。むしろ、短時間であるからこそ、コミュニケーションを通した認識の段階的な深まりというプロセスが凝縮された形でそこに出てくるといえます。それはすべてのセールス・マーケティングに共通のものです。3段階理論はその核心をなすといえるのです。

訪問販売もEC販売も
目指すところは同じ

 人々が営々と積み上げてきたリアルな場面でのモノの売買に比べれば、EC販売の歴史はごく短いものであり、まだ黎明期といっても過言ではありません。今後もデジタル技術の進展や5G、6Gと呼ばれる高速の通信規格が一般化することで、EC販売はさらに使いやすいものになっていきます。

 しかし、どのようなデジタル技術が間に入るにしても、人と人が向き合いコミュニケーションをとって購入の判断をする点で、リアルもECも変わるところはありません。

 訪問販売で3段階に区分した顧客の認識の深まりは、EC販売にもあります。その道筋を追って、顧客のなかに「買おう」という意思が形成されるまで丁寧な対話が必要なことは同じなのです。

 デジタルでのやりとりがどのような特徴をもち、どこに気をつけ、どういう点を活用すべきなのか──デジタルとリアルの双方に本質として貫かれている共通のものと、まったく異なるコミュニケーションスタイルであるためにしっかり区別して独自に工夫しなければならないこと、その両方を探っていかなければなりません。

 対面でのコミュニケーションであれば、言葉や口調、視線の動きや表情、体の動かし方などで、こちらの話がどう受け止められているか、どこに共感があり、どこはまだ引っかかっているのかといったことが分かります。

 リアルな対面とEC販売はまったく異なるもののように受け止められがちで、一度LP(Landing Page)をつくって公開すれば、あとは自動的に購入申し込みがくるかのように考えている人も少なくありません。

 しかし、リアルタイムの言葉のやりとりこそありませんが、ネットでも顧客との相互のコミュニケーションがあり、それが進行し深化して、顧客に納得が生まれたときに販売が成立するということには違いはありません。