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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

迷走する「シャルレMBO」があぶり出した
MBOの潜在的な問題点

――「情報の非対称性」と「関係者の利益相反」を払拭できるか?

永沢 徹 [弁護士]
【第52回】 2008年11月28日
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 いま、あるMBO案件の迷走ぶりに注目している。――それは、女性下着販売事業を手がける株式会社シャルレの創業家によるMBO。シャルレといえば、かつて女子バレーボール日本代表だった三屋裕子氏が社長を務め、昨年6月の株主総会で電撃解任されるというニュースで話題になった会社(当時の社名は、株式会社テン・アローズ)である。

 そのシャルレは三屋氏解任後、創業者である林一族が返り咲き、経営に当たっていたが、業績回復のためには抜本的な経営改革が必要であるとして上場廃止を決意。創業家とモルガン・スタンレーがファンドを組成し、株式公開買付け(TOB)を行なうに至った。

 そして今年9月22日から市場でTOBを開始。しかし、延長に次ぐ延長で、異例の70日以上に及ぶ買付け期間となっている。当初の買付け期限は11月5日。30営業日(45日間)の設定となっていた。それが、11月13日→11月28日→12月8日と3回も延長。相次ぐ延長を市場は嫌い、11月20日に行なった2回目の延長表明以降、同社の株価は大きく値を下げ、TOB価格である800円を大きく下回った状況が続いている(9月22日のTOB開始以降、終値で700円台後半を保っていた株価は、11月21日には682円、25日には582円、26日には488円と続落している)。

 さらには11月20日、MBO資金として最大116億円を融資する予定だった三菱東京UFJ銀行が、融資撤回を表明。TOBが始まっているにも関わらず、買収資金の目途が立っていないという異例の事態に至っている。

 まさにシャルレのMBOは完全に迷走状態。前例のない迷走ぶりに目が離せない、というわけである。

承認プロセスに問題あり?
内部通報で状況が一変

 そもそもなぜこのような事態になったのか――。そのきっかけは、「本件公開買付け価格(本件のTOB価格は800円と規定)の算定手続きに違法ないし不公正な点があった」という内部通報があったからである。その内部通報は、10月16日以降に相当数寄せられたという。その詳細については次の通り。

 今回のMBOにおいては、発案者である創業家側が外部機関に買付け価格を算定させ、MBO計画を組んでいる。そしてその承認には、同社の取締役会の決議が必要となる。取締役会では、発案者である創業一族は直接の利害関係が発生するため決議には参加せず、残る社外取締役3名で決議を行なった。それを「公開買付けに関する賛同意見表明」という形で適宜開示を行なっている。しかし、その承認過程において社外取締役らに利益相反行為があったのではないか、というのが前述した内部通報による指摘である。

 では、社外取締役らの利益相反行為とはどういうことを指しているのか?

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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