バシキール航空とDHLの空中衝突は
予防できた事故だった
第52講「航空事故調査から学ぶ【1】~離着陸時にはクツを脱ぐな」以来、航空事故とその調査手法から何が学べるかを見てきました。前回の「航空事故調査から学ぶ【3】~誰を信じるべきか。ヒトか? 機械か?」では、最後にTCAS(空中衝突防止装置)と管制官の指示が食い違ったために起きた事故を紹介しました。
それが、ロシアのバシキール航空2937便とDHLの貨物機DHL611便の空中衝突事故でした。バシキールのパイロットは管制官の指示に従って(TCASには反して)降下し、DHLはTCASに従って降下したのにそれが管制官には伝わらず、空中衝突という最悪の結果につながりました。
この悲劇の原因は、TCAS指示へのパイロットの対応が統一されていなかったことにありましたが、回避可能な事故でした。小中学生60名を含む71名の犠牲は、必然でもなんでもなく、ある事故の教訓を活かしさえすれば、予防しうるものだったのです。
それが日本航空2機による、駿河湾上空ニアミス事故でした。バシキール航空の事故からちょうど1年半前の2001年1月31日に、焼津市沖の駿河湾上空37000フィート(1万1300メートル)で起きました。