ファーストクラスにはシャワールームも!超大型機が「やっぱり良いかも…」と言われる空の最新事情写真:エミレーツ航空

世界の航空業界で超大型機を再評価する動きが高まっている。大量輸送が可能で、豪華なファーストクラスを設定できるなどのメリットもあるからだ。英~米では全機「中古のA380」の新興エアラインが就航した。中国勢の国産旅客機の開発状況も踏まえて、最新事情を考察する。(ライター 前林広樹)

世界の航空会社がA380を再評価!?
全機が中古A380の新興エアラインまで登場

 世界最大の旅客機といえば仏エアバスの「A380」だ。2階建てで500人以上を乗せることが可能。日本では成田~ハワイ・ホノルル線を飛ぶANAの専用機材「フライング・ホヌ」として使われている。また、ドバイを拠点とするエミレーツ航空の成田線・関空線でも飛んでいる。この機内ではシャワールームやバーラウンジが設置されるなど、超豪華なファーストクラスとして知られる。

 一方で、A380はその巨大さゆえに多くのエアラインが購入をためらい、売れ行きは低迷。2020年に生産が終了した。コロナ禍が追い打ちをかけ、エールフランスや中国南方航空、タイ国際航空やマレーシア航空では全機の運用を終了。他社でも初期に生産された機体を中心に退役が進んでいる。

 また、A380のライバル機である米ボーイングの747シリーズについても、23年に生産終了となった。こちらも退役が進んでいて、完全に見られなくなる日も近いだろう。

 ところが最近、超大型機を再評価する動きが高まっている。その筆頭が、100機以上のA380を運航するエミレーツ航空だ。同社のティム・クラーク社長は今年2月、「より軽量で効率性の高いエンジンを搭載したA380の改良型を待っている」とコメント。

 エミレーツはA380を2030年代まで運用する方針。また、中東のカタール航空やエティハド航空、欧州のブリティッシュ・エアウェイズ、ドイツのルフトハンザ航空、アジア勢ではシンガポール航空、大韓航空、オーストラリアのカンタス航空などもA380の運航を再開した。

 他方、5月15日にはイギリスで、全機材が中古のA380というユニークな新興エアライン(グローバル航空)が英グラスゴー~米ニューヨーク路線に就航した。高級シャンパンやキャビアを提供するファーストクラスの豪華サービスをはじめ、A380ならではの体験を前面に押し出したマーケティングで欧米メディアの注目を集めている。

 かつてA380は「愚かな選択」とまで批判されていたのにもかかわらず、なぜ今になって再評価の流れが確実に進んでいるのか。