日銀・植田新体制は「期待外れで不誠実」…著名エコノミストが酷評する理由日本総合研究所 調査部 河村 小百合 主席研究員
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 日本銀行は7月に、イールドカーブ・コントロール(YCC)の実質的な上限を1%まで拡大するなど、徐々に金融政策の正常化へ向けた道筋を探っている。その一方で、足元では物価上昇が賃金上昇を大幅に上回るなか、その状況を打開するような具体的な対策に乗り出せないままでいる。異次元緩和の長期化のひずみで積み上げられた、大量の国債を巡る利払い費の増加など、財政問題も取り沙汰される。日本総合研究所の河村小百合主席研究員は、こうした金融政策や財政政策に携わる日銀や政府の政策運営姿勢が無責任だと批判する。(編集部)

財務リスクを説明せず不誠実さが際立つ日銀

──現在まで続く日本銀行の異次元緩和についてどのように見ていますか

 最初の1年は良い効果が表れていたが、その後、緩和効果がなくなった時点で政策の軌道修正を検討すべきだった。異次元緩和は長く続けるほど効果が増幅するものでもない。それどころか効果が薄まったことが誰の目にも明らかだったのに「結果が出るまでやり続ける」というスタンスを押し通したことが一番の問題だ。

 これまで金融政策の正常化へと向かうチャンスがなかったわけではない。特に、2021年ごろから世界の経済情勢が大きく変わり、海外はインフレ高進局面に入った。その影響は日本にも及び、低インフレから脱却できない状況が一変し、消費者物価指数の上昇率が4%台に乗る月(22年12月~23年1月)も現れた。足元でも、3%台で推移する状況が続いている。

 日銀は、2%の「物価安定の目標」に固執しているように見えるが、消費者物価はすでに1年以上、目標の2%を大きく上回る状態が続いている。しゃくし定規に「安定的に2%の物価水準に達するまでは正常化しない」というのはそもそもおかしい。例えば、米連邦準備制度(Fed)はリーマンショック後、物価目標「2%」に到達する前に、それ以降のさまざまなリスクを検討・説明した上で金融政策の引き締めに転じている。このように、本来、時宜にかなった金融政策運営があってしかるべきだ。