「健康コスト」の
ムダ使いをしないために

「健康にいいこと」をするには、コストがかかります。それはお金という経済的なコストであったり、面倒なことをする精神的なコストだったり、運動をするなどの肉体的なコストだったり。このコストを払えるかどうかが、本当に健康になるためのカギです。

 本稿で伝えたいのは、正しい知識により、ムダな「健康コスト」を省き、かつ、健康コストの見積もりへのバイアス(偏見)をなくすことができるということです。

 プリン体と尿酸、痛風の関係を、もう少しだけ説明します。

 プリン体は体のエネルギー源(ATPと言います)やDNAなどの材料です。ATPやDNAが役目を終えたとき、体内で分解されて尿酸になります。ここで、食事で摂取したプリン体が分解されてできる量より、体内のDNAなどが分解されてできる量の方がずっと多いのです。

 尿酸はいわば「最終処分される産業廃棄物」です。1日約700mgの尿酸が作られ、そのうち食事由来は約100mg~150mg。DNAなどから分解されるのが約550mg~600mg。つまり、食事でプリン体を控えても、体内ではさらに多くの尿酸が作られているのです。

 ここで、アルコール飲料に含まれるプリン体量はあまり多くないものの、アルコールの作用により尿酸値は上昇し、毎日お酒を飲む人は痛風のリスクが2倍で、特にビールを飲む人の危険度が高いという報告もあります。総合すると、次のことが言えます。

(1)プリン体0ビールを選ぶ意味はない
(2)プリン体を気にするならそもそもお酒自体を控えるべき
(3)お酒を飲むならプリン体の多い食品を控えるべき

 痛風予防に対してインパクトの大きな対策は(2)と(3)。お酒が好きな方は(2)が難しいので、(3)をするのがおすすめです。その際、「プリン体が多い食品」は一般的なイメージと異なる(納豆も、ブロッコリーも、ヘルシーな印象ですよね)ので、正しい知識を持って選ぶようにしてください。痛風患者に対しては、日本痛風・尿酸核酸学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』に「1日400mg」という目安があります。

 一番よくないのは、意味のない(1)をすることで「やった感」が出てしまい、本質的な(2)(3)の対策をしなくなることです。このように、ムダなコストを省き、なるべくインパクトの大きな対策をすることが、健康への近道になるのです。