ドリンクを飲む女性写真はイメージです Photo:PIXTA

昨年話題になった「ヤクルト1000」や筋トレする人の必需品となったプロテイン。健康にいい印象は強いですが、実際のところ、どれだけ身体に有効なのでしょうか。この疑問について、医療記者の朽木誠一郎氏の著書『健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本 1日3秒から始める、挫折しない20日間プログラム』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集してお送りします。

「飲むと睡眠改善」が
大きく話題になったが…

 2022年、ヤクルト社の「ヤクルト1000」という商品が社会現象と呼べるほどの人気を集めました。品薄が続き、SNSには「見つけた場所」が書き込まれ、そこに走る人々が出るほど。そんなヤクルト1000は、まさに機能性表示食品です。「一時な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげる」機能、「睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める」機能をうたっています。有名タレントがヤクルト1000により「眠りが良くなった」という趣旨の発言をテレビでしたことで、話題に。「売り切れ続出」がさらにニュースになり、注目され、SNSには多数のクチコミが生み出されています。

 さて、ここでヤクルト社の公式サイトには、「自主的なチェック」の結果が公開されています。

 進級に重要な学術試験を受験する4年次の健常な医学部生の男女(対象者94名)を2群に分け、被験食群には「Yakult(ヤクルト)1000〈乳酸菌 シロタ株を1000億個含む飲料〉」を、対照群には疑似飲料(味や外見は同じで、有効成分を含まないもの)を1日1本(100ml)、学術試験の8週間前から試験終了後3週間まで飲用してもらいました。

 この結果、「熟眠時間と熟眠度が増加、起床時の眠気を示すスコアで改善が認められた」「唾液中のコルチゾール濃度(ストレスがかかると上昇する)の上昇の度合いが低かった」と同社。さて、この結果をみなさんはどう感じたでしょうか。

 研究に参加した人の数をみても、医学研究の数万、数千という単位からはかけ離れていることがわかります。また、「進級に重要な学術試験を受験する4年次の健常な医学部生の男女」が極めて偏った集団であることは否めません。消費者庁の公式サイトに掲載されたヤクルト1000の試験結果のレビューには、次のように書かれています。

 採用された文献が4報あり、肯定的な内容で一貫性のある結果が得られていることから、科学的根拠の質は十分と判断しました。しかし、研究の限界として出版バイアス(筆者注:否定的な結果が出た研究が公表されにくいこと)の存在が否定できないため、今後さらなるエビデンスの拡充が望まれます。

 社会現象になった健康食品も、実際には、医薬品と比べればはるかに根拠が弱いもの。著名人が紹介しても、SNSで話題でも、それだけで鵜呑みにはしないでほしいのです。