ビールを飲む男性写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事終わりの至福の一杯のビール。「だけど前回の健康診断で尿酸値が高かったし、“プリン体0”を選んでおこう……」。堅実な判断に思えますが、じつは健康的なイメージのある食品のほうが、ビールより尿酸値が高いこともあるのだとか。尿酸値が気になるならチェックすべきポイントについて、医療記者の朽木誠一郎の著書『健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本 1日3秒から始める、挫折しない20日間プログラム』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集してお送りします。

「プリン体0ビール」を
選ぶ意味はない

 今回は、健康診断で「注意すべき項目」の話です。

「ビールはプリン体0のものを選ぶようにしている」。身の回りにこんなことを言い出した人、いませんか。“健康クライシス”を迎える30~40代同士の会話では、「いかに健康に気を使っているか」がホットトピックになってきます。でも、そこには大きな勘違いが潜んでいます。

「ビール」「ブロッコリー」「アン肝(生)」「納豆」のうち、100ml/100グラムあたりのプリン体含有量(mg)がもっとも多い食品はどれだと思いますか。

 正解は「納豆」です。帝京大学薬学部教授の金子希代子さんは、それぞれの数字を「ビール(3.3~6.9)」「ブロッコリー(70.0)」「アン肝(104.3)」「納豆(113.9)」としています。健康によさそうな納豆は、プリン体含有量がかなり多いのです。

 逆に、いくら「プリン体0」を打ち出していても、そもそもビールに含まれるプリン体の量は多くないのです。地ビールではもう少し増えるようですが、それでも十数mgです。

 何となく「体にいいこと」だと思っていることが、実はそうでもないとわかる例が、このプリン体です。

 そもそもなぜプリン体を避けているのか、といえば、基本的には痛風を防ぎたいからでしょう。プリン体は体内で分解され、痛風を引き起こす尿酸を増やすからです。とくに高尿酸血症は30代に多く、働き盛りにとって、気になる健康診断の項目の1つであるはずです。

 しかし、そもそもプリン体は肉や魚、大豆など体に必要なたんぱく源に多く含まれ、避けるのはあまり現実的ではないのです。少なくともプリン体0のビールを選ぶことは、全体に対してあまりインパクトの大きいことではありません。

 そういう目で見てみると、「プリン体0ビール」の商品の説明のどこを読んでも、「尿酸値」や「痛風」と結びつけた説明はないということに気づきます。商品がうたうのは、あくまで「プリン体が0」という事実だけ。マーケティングのためのキャッチコピーに過ぎないのです。

 正しい知識がないと、こうした販売戦略にダマされやすくなることには、注意が必要です。逆に言えば、大してプリン体が多くないのに「痛風の原因」のように認識されてしまったビール商戦の苦肉の策でもあると言えるのですが――。