岐路に立つビズリーチ 大解剖#1Photo:akasuu/gettyimages

ハイクラス転職サービスを提供するビズリーチ。いかにも急成長中のベンチャーといったイメージだが、自社の給料水準と設計の仕方には不満の声が内部から漏れ伝わる。特集『岐路に立つビズリーチ 大解剖』(全5回)の#1では、独自に入手した60ページに及ぶ人事資料から等級・役職別の修正理論年収を試算した。すると、成果でほとんど差がつかない、社内から「古い日本企業のようだ」とやゆされるような人事制度であることが分かった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

急成長ベンチャーの中に潜む
成果で差がつかない報酬制度の実態

 人材サービス業界で独自のポジションを築き、急成長してきたビズリーチ。好調が続くのは、「高度人材のデータベース」と「ダイレクトリクルーティング」を掛け合わせた先駆者だからだ。まずは簡単に説明しよう。

 通常の人材紹介会社は、求職者と採用企業との間を仲介する。採用できた場合の報酬として、想定年収の30~35%程度を手数料としてもらうのが一般的だ。

 この成功報酬を、ビズリーチはたったの15%で実現している。

 その秘訣は、ハイクラス人材が集まるプラットフォームにある。そこでは、多くの場合で、仲介者を挟まず企業が求職者に直接アプローチしている。中間コストをカットすることで15%を実現、雇用者側にも求職者側にも支持され、成長を続けてきたのだ。

 9月に発表した2023年7月期決算では、ビズリーチを傘下に持つビジョナルの売上高が前年比28%増、営業利益は同59.7%増と依然好調だ。印象的なCMも相まって、典型的な急成長ベンチャー企業を想像する読者も多いだろう。

 ところが、そんな輝かしいイメージとは裏腹に、ビズリーチの社内にはオールド企業的な仕組みが存在する。社員の懐に関わる報酬制度だ。

 ダイヤモンド編集部は、60ページに及ぶビズリーチの人事資料を独自に入手した。すると、部長級でも年収が700万円を下回ることがあり、社内ではなかなか“ハイクラス”にありつけない厳しい出世事情が判明した。

 では、成果を出せば給料が上がるのかといえばそうでもない。人事資料を基に成績の違いによる理論年収を試算すると、インセンティブもかなり小さいことが分かった。

 日本の悩める人事部を支援するビズリーチ。その内部で起こっている人事制度の悲劇を、次ページで徹底解剖しよう。