もちろん、考える力がなくては正しい知識があっても意味がありません。いわば知識は武器で、考える力はそれを使いこなす筋肉。立派な刀がなければ戦えないけれど、その刀を手に入れたとして、振り回すだけの力がなければ宝の持ち腐れです。武器と筋肉、両方を手にして武将は強くなっていくのです。

 いい武器となる知識と、トレーニングを重ねて手に入れる思考力。

 どちらも欠かすことのできないものですが、まずは武器がなければ何も始まりません。

「自分たちしか知らない真実」は、たいてい偽物

 では、どこで正しい「知」を得ればいいか。これは意外かもしれませんが、信頼できる情報というのは、限られた人だけが手に入れられるものではありません。

「自分たちしか知らない真実」は、たいてい偽物です。ここを理解していないと、簡単に陰謀論にハマってしまいます。「隠された真実」に高揚し、自分で情報を集めたり考えたりすることを放棄し、怒りやヘイトを溜めるだけになってしまいます。

 公的な調査結果や統計はいまやネットにも掲載されていますし、図書館に行けば専門書や論文など、ファクトが並んだ情報を手に入れることができます。

 そういった情報は、ローデータ(見やすいように加工されていないデータ)のことも多く、自分で読み解く必要があります。しかしそこでの労を惜しまず、意図や思想が「介在していない」情報にあたることを意識してみてください。

深い知を持つ人ほど楽しそうに生きている

 さて、「知は力(Knowledge is power)」という言葉があります。

 16世紀から17世紀にかけて活躍した連合王国(イギリス)の哲学者、フランシス・ベーコンが唱えた、僕の大好きな言葉です。この言葉は文字どおり、「知識(知ること)こそが人間が生きていくうえでの力となる」ことを意味します。

 僕は人生の中で、幾度となくこの言葉を実感してきました。たくさんの、そして深い知を持つ人ほど力強く、楽しそうに生きているのです。論理的かつ合理的に考えることができるし、何歳になっても目をキラキラと輝かせて自由に生きている。

 しかし、「知ろうとしない人」はその逆です。自分の人生を切り拓くこともできないし、仕事で活躍することも、社会をよくすることもできないのです。