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山崎元のマネー経済の歩き方

日本経済破綻論の小休止と次のターゲット

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第14回】 2008年1月8日
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 筆者の記憶では、2005年頃まで、書店の経済書コーナーには日本経済破綻の可能性を訴える書籍が多数並んでいた。

 議論のパターンは、おおむね3つあった。1つは、金融機関、特に銀行が不良債権によって経営破綻し、預金の封鎖と一部切り捨てが行なわれるというものだった。もう1つは、国家財政が破綻し、やはりその穴埋めのために国民の預金が一部没収されるような筋書きだ。少し後には景気回復の兆しが出てきたこともあり、日本の財政赤字がハイパーインフレにつながるという筋もあった。いずれでも、預金や現金のかたちで貯め込んだおカネは「紙切れ」になると警告されていた。

 これらの書籍が提示する解決策は以下のようなものだった。(1)著者の主宰するセミナーでの勉強、(2)海外プライベートバンクへの資金委託、(3)海外不動産投資、(4)金投資、などだ。多くの場合、親切にも、解決策のための連絡先が巻末付近に書かれていた。

 読者はすでにおわかりだろうが、日本経済の破綻を語る書籍とその著者の活動は、健康に関する脅しをサプリメントなどの健康食品の販売に結び付ける商売や高額な「霊感の壺」を売りつけるビジネスとよく似ている。相手を脅して不安にさせて、解決を与えるかたちで商品やサービスを売り込むのだ。

 もっとも、世の中は単純ではない。プライベートバンクを通じてヘッジファンドなどに投資した人は、これまでにかなり損をした可能性があるが、最近急騰した金に投資した人などは、「結果的に」大いに儲けたかもしれない。

 しかし近年、こうした「脅しのセールスマン」にとっては、状況が困難になってきた。

 まず、公的資金投入に次ぐ景気の回復もあり、日本のメガバンクの財務状態は快復し、公的資金を完済したうえで、さらに自社株買いを検討する会社さえある。また、国際展開の遅れがかえって奏功して、サブプライム問題による損失も軽微だった。銀行預金の切り捨てには、目下、現実味がない。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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