重症化防止薬は3割負担でも2万8000円かかる
これまでの公費補助は9月で終了した

 だが、2022年秋頃になると、パンデミックは下火に向かい、重症化する人や死亡する人の割合が低下するようになる。また、長引くコロナ禍で業績悪化が続く経済界からは、早期の正常化が求められるようになっていた。

 そこで、2023年1月、COVID-19の感染症法上の位置付けを見直すことを決定。ゴールデンウイーク明けの5月8日から、それまでの「2類相当」から、季節性インフルエンザや肺炎球菌などと同じ「5類感染症」に引き下げられたのだ。そして、医療費についても公費負担のあり方が見直されることになった。

 季節性インフルエンザや肺炎球菌など、5類感染症に分類されているものには、自治体による入院・隔離の勧告はなく、かかった医療費に対する公費負担もない。本来なら、COVID-19も5類感染症に移行した段階で、その他の病気やケガと同じように、年齢や所得に応じた一部負担金の支払いが求められるはずだった。

 だが、開発から間もないCOVID-19の重症化防止薬は、いまだ高額だ。たとえば、ラゲブリオカプセル200mgという薬剤は、1カプセル当たり2357.8円(2023年9月現在)。18歳以上の人に用いられる標準的な治療は、1日8カプセル(1回4カプセル×2回)を5日間服用する。5日間の薬剤費の合計は9万4312円なので、健康保険が適用されても、3割負担で約2万8290円、2割負担で約1万8860円、1割負担で約9430円だ。

 重症化して入院した場合は、さらに負担は重くなる。人工心肺装置が装着されたり、陰圧室を利用したりすると、医療費は数百万円単位になることもある。医療費が一定額を超えると、健康保険の高額療養費が適用されるが、それでも最終的な自己負担額は10万円程度になる(年収500万円の70歳未満の人で、医療費100万円だった場合。入院中の食事療養費を含む)。

 5月7日以前の医療費が原則的に無料だったことを考えると、通院も入院も負担感は大きい。そこで、急激な負担増を避けるために、段階的に公的支援を減額していくことになったのだ。そのため、5類移行後も期限を区切って、9月末までは一定の公費負担が継続されていた。