かつて「前田島」と呼ばれたタックスヘイブン、批判で失速も今また企業登記が急増のワケラブアン島のシンボル、An'Nur Jamek Mosque Photo:PIXTA

「日本から最も近いタックスヘイブン(租税回避地)」として名をはせた場所をご存じだろうか。マレーシアのラブアン島である。2016年に世界中のタックスヘイブンを利用した脱税やマネーロンダリングを告発した「パナマ文書」が漏洩して以来、この島にも国際的な批判が高まった。マレーシア政府は20年に法規制を強化し、現在はタックスヘイブンとしての魅力はなくなっている。ところが、今でも法人登録数は増えているという。いったい、なぜなのか? 現地取材で謎に迫った。(ジャーナリスト 竹谷栄哉)

タックスヘイブンの魅力が薄れても
法人数が増え続けている謎

 ラブアン島はマレーシアのボルネオ島の北部に位置する。昔は単なる田舎の島だったが、1990年に当時のマハティール首相の肝いりで、優遇税制が適用される外資誘致特区となった。割安なオフショア法人運営コストと、「法人税率3%、または年間定額2万リンギット(現在のレートで約60万円)」という法外に安い税制で海外から投資を集め、「第二の香港」のような金融都市に育てる政府の思惑があったとされる。タックスヘイブンとして国内外からの評価を獲得したラブアン島には、日系企業も拠点を設けており、三菱UFJ、三井住友、みずほの大手3銀行が支店を開設してもいる。

 しかし、“税の避難地”はある出来事をきっかけに大転換を迫られる。2016年に世界の企業や個人がタックスヘイブンを利用して租税回避やマネーロンダリングをしている実態が記された「パナマ文書」が漏洩したのだ。国際的な批判が高まると、マレーシア政府は態度を一変。20年に法改正し、規制を強化した。低税率の適用を受けるための条件が非常に厳格化されたため、タックスヘイブンとしての役割は事実上、終焉(しゅうえん)を迎えた。

 ところが、ラブアン島の新規法人登記を調べてみると、19年に981社、20年に664社、21年に455社、22年に532社と、いまだ数百社単位で実施されている。実際に稼働している法人数は19年に6158社だったのが、22年には4847社と減っているものの、それでも多くの企業が稼働していることになる(数字データはラブアン国際金融センターの年間リポート調べ)。ラブアン島で今、何が起こっているのか。現地取材すると意外な事実が判明した。