現役世代の手取り年収は21年間で43万円減…「犯人」社会保険料の膨張を抑える方法とは?Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 国立社会保障・人口問題研究所が今年8月に公表した「社会保障費用統計」によると、2022年度の社会保障給付費は138兆7,000億円で、21年度から6兆5,000億円(4.9%)増加した。これは1950年度の集計開始以降、過去最高の値だ。本稿では、今後の社会保障費を巡る(1)政府の予測と実績の乖離問題と、(2)現役世代の負担増に関する問題を概説した上で、その解決策を提示する。

政府予測を大きく上回る社会保障給付費の実績

 社会保障給付費を巡る第一の課題は、社会保障給付費の政府予測と実績の乖離問題だ。社会保障給付費の見通しについて、実績値との比較で参考となるのは、内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が2018年5月に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(40年試算)である。この40年試算では、(1)高成長ケース=名目GDP成長率が3%程度、(2)低成長ケース=名目GDP成長率が1%程度という二つのケースが示されている。

 1995年度から2022年度までの名目GDP成長率の平均は0.35%にとどまっていることから、本稿では(2)の低成長ケースの試算結果を用いる。図表のとおり、低成長ケースでは、18年度に21.5%であった社会保障給付費(対GDP)は25年度に21.8%、40年度は24%に達する。社会保険料負担(対GDP)は、社会保障給付費の予測とも連動するかたちで、18年度12.4%、25年度12.6%、40年度は13.6%に達すると予測される。

 問題の本質は、この予測を上回るスピードで社会保障給付費や社会保険料負担が上昇しており、実績値との乖離が拡大していることである。19年度における社会保障給付費の実績値は22.14%で、この値は25年度の予測値を0.34%ポイント上回っている。19年度の社会保険料負担の実績値も13.22%と25年度の予測値を上回っており、40年度の予測値に近い値に迫っている。

 なかでも筆者が驚いたのは、21年度における社会保障給付費の値が25.2%となったことだ。この値は、40年度の予測値をすでに1.1%ポイント上振れしている。新型コロナウイルス関連支出の影響もあるが、コロナ収束後における23年度でも、社会保障給付費(予算ベース)は対GDP比で23.5%になっており、25年度の予測値を1.7%ポイントも上回る。これは、政府の40年試算が想定する名目GDP成長率よりも、社会保障給付費の実績値の伸びの方が大きいことを意味する。