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森信茂樹の目覚めよ!納税者

TPP交渉の本質は法律議論
ローヤーの参加なければ劣勢必至

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第45回】 2013年3月12日
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「焼酎・ウイスキー
税制格差問題」の経験

 私は旧大蔵省時代に、「焼酎・ウイスキー税制格差問題」で、WTO(世界貿易機関)および日米交渉の担当課長を経験したことがある。その経験から、貿易交渉は、ローヤー(法律家)の交渉でもあるということ、日本が万全な体制を敷くためには、ローヤーの活用がカギを握っているということを述べてみたい。

 まず、自らマルチ(多国間)・バイ(二国間)の交渉当事者となった経緯について。

 95年当時のわが国酒税では、焼酎とウイスキーの間に6倍の税率格差があった。これが、ガット協定第3条の、「同種・直接競合・代替可能産品」の場合には、国内生産に保護的な課税をしてはならない、という規定に反しているとして、二国間協議を経てWTOに訴えられたのである。

 1995年7月、日本第1号のパネル案件として、焼酎とウイスキーの税率格差問題を取り扱うパネルが設置され、議論が始まった。

 2年間にわたるパネルでの議論の結果、ウイスキーと焼酎は「直接競合・代替可能産品」であるとしてわが国は敗訴、それを受けて上告、さらには仲裁へと進んだ。しかしわが国の主張は通らず、6倍の税率格差をデ・ミニミス(最小限)なものとすることが求められた。最終的には、日米、日EU、日加の二国間協議で代替措置などを詰めて、98年度の税制改正の中で決着したのである。

 WTOパネルや、米国USTR(通商代表部)との議論や交渉は、基本的に法律議論であった。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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