「20代の社員が言うことを聞かない」嘆く管理職に欠けている“もう一つのP”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

総務省統計局の発表では、2022年度の転職者数は前年比13万人増の約303万人。若い世代ほど転職を前向きに捉える傾向があり、なかでも26歳以下(1990年代半ば~2010年代生まれ)のZ世代の転職意向は、全年代のうちで最も高いという。日本型雇用をアップデートする彼らの転職観とは。(清談社 真島加代)

Z世代が目指す
「シン・ゼネラリスト」

 一昔前まで、転職に対してネガティブなイメージが強くあったが、現在は企業側も積極的に中途採用を行うようになった。活性化する転職市場について、リクルートHR統括編集長の藤井薫氏は「日本型雇用は100年に一度の転換期を迎えている」と話す。

「日本の終身雇用時代が終わりに近づき、それに伴い全世代で転職意向が高まっています。その背景には“人生100年時代の到来”と“構造的な人材不足”という、2つの事象が深く関わっています。まず、人生100年時代になり『元気なうちは働きたい』と考える人が増え、個人の職業寿命が延びました。その結果、新卒で入った会社に定年まで在籍するのではなく、育児や介護、リスキリング後の再就職など自分のライフステージに合わせて職場を変え、キャリアを自在に選ぶ人も増えているのです」

 一方、企業は15歳~64歳の生産年齢人口の減少によって“構造的な人材不足”に陥っている。そのため、新卒一括採用だけでなく、スキルを持つ人材のキャリア採用を行い、新規事業の立ち上げや事業転換時のメンバーとして迎えるようになったという。

 そのほか、近年の傾向として「Z世代(26歳以下)の転職意向が特に高い」と藤井氏は話す。

「我々リクルートが行った調査『就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022』では20~50代のうち、20代の転職意向が最も高く65.9%の人が『いずれは転職したい』と答え、29.1%が実際に転職活動を行っていました。また、リクルートワークス研究所の『大手企業における若手育成状況調査報告書』で2019~2021年に大手企業に就職した26歳以下の若手を対象に『現在在籍する会社でどれだけ働き続けたいか』というアンケートを実施したところ『2~3年(働きたい)』との回答が、最多の28.3%を記録しています」

 前述の「大手企業における若手育成状況調査報告書」を年数別に見ると「5年」は15.6%「10年」は13.7%と、期間が短いほど転職意向が高く、先の「2・3年」と答えた割合を合計すると57.6%、約6割の若手が“10年以内に転職したい”と考えていることも明らかに。反対に「定年・引退まで働き続けたい」と回答したのは20.8%と、全体の約2割にとどまった。

 この結果から「大手企業の若手社員であっても1社で勤め上げたい人は少数派になっている」と藤井氏は分析する。

「同じ調査で今の職場環境について聞いたところ、45.6%の人が『自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる』と、自らのキャリアに危機感を募らせていました。彼らは1社だけに通用する『企業内特殊能力』を極めるのではなく、どの会社でも通用するゼネラリスト志向が高いのが特徴です。以前なら“社外でも通用する能力”を身につける際に、ひとつの技術を極めてスペシャリストを目指す傾向がありましたが、Z世代は複数の分野で高い専門性を身に着けたいと考えているようです。私たちは彼らを『シン・ゼネラリスト』と呼んでいます」

 彼らにとって“転職”は、さまざまな分野で専門性を高め、生き残るための手段なのだ。