貨幣博物館の入り口貨幣博物館の入り口 Photo by Kenichi Tsuboi

2024年7月前半をめどに、新しい紙幣がお目見えする予定だ。これを記念して「新しい日本銀行券2024~匠の技とデザイン」という特別展が東京・日本橋の日本銀行金融研究所にある「貨幣博物館」で開催されている。貨幣の歴史や偽造防止技術が展示されていて結構、見応えがある。ついでに、「渋沢翁のテーマパーク王子飛鳥山」まで足を伸ばしてみると、面白い発見がたくさんあった。(コラムニスト 坪井賢一)

渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎が新紙幣の顔に
2024年にF券発行、規則的な改刷は3度目

 貨幣博物館の特別展は、古代・7世紀の富本銭と8世紀初頭、律令国家設立時代の貨幣である和同開珎(708)から展示が始まる。貨幣の流通で定期的な市(いち)も普及し、市場経済が拡大していくのがこの時代である。

 そして古代から中世へ、中国から貨幣の輸入、国内の鉱山の開発、金貨・銀貨の発行、戦国時代を経て江戸時代の通貨統一、各地藩札(紙幣)の発行と続く。さらに近代化後、明治の日本銀行券(いわゆる紙幣)による独占的な貨幣発行へ、1300年間の経済史を駆け足で学ぶことができる。

 金融恐慌(1927)、昭和恐慌(1930年代)によるデフレを経て、戦時経済と敗戦後のハイパーインフレで日本の通貨制度は崩壊した。こうして戦後、新しい制度で再出発することになる。

「こいつ…動くぞ!」2024年発行の新紙幣は渋沢栄一もびっくり?世界初の偽造防止技術

 戦後の紙幣は、1946年発行のA券、50年のB券、57年のC券と短期間に改刷され、84年のD券からは20年に一度の規則性を与えられている。2004年にはE券が発行され、24年にF券発行。規則的な改刷は3度目だ。

 24年7月発行予定のF券、新1万円札の肖像画が渋沢栄一(1840~1931)、5000円札は津田梅子(1864~1929)、1000円札は北里柴三郎(1853~1931)である。

 現在の国民になじみがあるのはC券1万円札の聖徳太子(574~622)、D券1万円札の福沢諭吉(1835~1901)だろう。福沢はE券でも引き継がれたので、40年間も懐中にあったわけだ。

 一方、この展示では偽造防止技術も詳しく紹介している。そもそも改刷は偽造防止のためで、古代から現在まで、世界各国で偽金造りのギャング団との闘いが続き、偽造防止技術も発展してきた。

 実は、24年の日本銀行券の改刷は、世界初の技術が駆使されている。「機動戦士ガンダム」第1話に登場するアムロ・レイのセリフよろしく、「こいつ…動くぞ!」と驚いた。