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山崎元のマネー経済の歩き方

運用ビジネスをこれからやるとしたら

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第33回】 2008年5月27日
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 友人と会うと、運用会社をつくりたい、という話がよく出る。既存の大手の運用会社に入って仕事をしたいという意見はほとんど出てこない(職探し中は別だが)。多くの経験者が、サラリーマンとして運用にかかわることにはうんざりしており、自分たちで運用会社をつくるという設定でないと、話は盛り上がらない。

 正攻法は、投資信託の運用会社をつくることだ。身近なプロダクトで、多くの人に影響を与えることができる。しかし、公募の投資信託を自社で運用する会社をつくるとなると、小さくすませるとしても十数人の会社を立ち上げなければならないし、システムのコスト、金融庁に納得してもらえる会社の体制整備、それにファンドを銀行や証券会社で売ってもらうための販路開拓など、初期投資の大きさや運用以外の経営的課題の大きさに腰が引ける。会社をつくってから、黒字になるまでの規模にファンドを積み上げるには時間がかかるし、それに耐えるだけの財務的な基礎が必要だ。

 ローコスト化のためには、ファンド・オブ・ファンズの形式を使って他社のファンドを組み入れる商品を提供する方法があるが、自社で運用しないのはつまらないし、信託報酬が二重にかかる点が最終顧客にとって負担であり、非合理的なのが決定的な難点だ。他社のファンドを薦めるなら、ブログでも立ち上げて無料で教えるほうが親切だし、投資教育としても有効だろう。ただし、近年ETF(上場型投資信託)の選択肢が増えてきた。複数のETFを組み入れ対象とする運用商品は、運用、制度、ビジネスの三方面から検討してみる価値があるかもしれない。

 公募の投資信託にかかわるなら、既存の投信運用会社に商品企画を提案してファンドをつくってもらい、自分は投資顧問会社をつくってそのファンドの運用に対して助言をするサブアドバイスの形式が現実的かもしれない。音楽でいうと、プロデュースと作曲を手がけて、楽曲をレコード会社に持ち込み、アーティストに演奏してもらってCDを出すようなイメージだ。自分も演奏に加わることができるかもしれない。ただし、どの程度自由になるかは未知数だ。

 独立して短期間で経済的な成功が得られるかもしれないという意味では、ヘッジファンドにやはり魅力がある。魅力の中心は成功報酬(たとえば運用益の2割)の仕組みであり、これは、それだけ顧客側が不利だということでもあるが、会社として採算を取るために必要な運用資金の額が、オーソドックスな投資信託や投資顧問会社と比べると一ケタ小さい。

 ひと頃参入が相次ぎ、ビジネス的にも好調だったのが和製ヘッジファンド業界だった。しかし昨年、今年と続いた多くのファンドの運用戦略に合致しない日本株の相場環境と、サブプライム問題によるヘッジファンドからの資金引き揚げの流れで、多くのファンドが、成功報酬など夢のまた夢、といった惨状に陥り、縮小や撤退の話があちこちで聞かれるのが現状だ。

 ただし、一つの戦略が徹底的にダメになったときには、案外その戦略(ないしその改良版)にとっての環境がプラスになっていることがある。この場合、有望な戦略が見えやすい。世間からずれたタイミングで、これからヘッジファンドを始めるというのは、相場的には案外筋がよさそうだ。もっとも、相場的なチャンスと、ビジネス的なチャンスが、なかなか一致しないのが、この商売の難しさだ。それに、成功報酬の水準(取り過ぎ)には、やはり抵抗感がある。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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