点眼薬写真はイメージです Photo:PIXTA

厚生労働省が「選定療養」の導入に着手した。現行の国民皆保険制度では、特許の切れた新薬と、その半額程度の後発医薬品(ジェネリック)があるとき、患者はどちらを選んでも保険が適用され、薬価の1~3割を負担する。選定療養とは、患者が新薬を選ぶ場合、ジェネリックとの差額を患者負担とする仕組みだ。これが導入されれば新薬を選ぶ患者が減り、医療費が削減できる。社会保険審議会の医療保険部会で検討されてきたが、議論の過程で浮上したのは、新薬とジェネリックの有効性と安全性は同一なのかという、医療の本質に関わる問題だ。(フリーライター 坂田拓也)

点眼薬の新薬とジェネリック
眼科教授の6割が「同等」と考えず

 選定療養の問題の一つの例として挙げられるのが、点眼薬だ。

 日本眼科学会が全国の眼科教授72人にアンケートを取ると、新薬とジェネリックの有効性が「同等」と回答したのは39%にすぎず、「同等ではない」と「どちらとも言えない」が61%を占めた。安全性については「同等」が29%にすぎず、「同等ではない」と「どちらとも言えない」が71%を占めた。

 多くの専門医が、新薬とジェネリックに差があると考えているのだ。具体的に指摘される違いはいくつかある。

 一つは、点眼薬は医師の処方通りに点眼を続けることが難しいという問題に関わるものだ。

 高齢者が罹患し、患者数が400万~500万人といわれる「緑内障」は、眼圧が視神経を圧迫して視野が徐々に狭くなり、失明に至ることもある。

 その治療薬(点眼薬)は眼圧を下げることを目的として30種類以上あり、一つ目の薬で眼圧が下がらなければ、二つ目、三つ目と組み合わせていく。

 組み合わせが増えていくと、一つ目の薬が1日3回の点眼、二つ目の薬が1日2回の点眼など、頻度と煩雑さが増していく。4~5種類の点眼薬を1日6回も8回も点(さ)している患者も多いという。

 しかも先に点眼した薬を流さないために、次の薬を点眼するまで5分間空ける必要がある。この煩雑さにより、処方を続けられずに脱落していく患者は少なくないという。

 新薬の場合、発売後も、そして特許が切れた後もコストをかけて改良が続けられるため、点眼回数を1日6回から3回に減らすなど負担を軽減した製品が出てきた。しかしジェネリックの場合、低価格に抑えるために改良は行われず、煩雑なままなのだ。

 都内の眼科医は「中には、頑張って点眼すべきだと考える眼科医もいるが、実際に点眼を続けられない患者も多い。治療効果を出すためにも、新薬を選ぶべきだ」と指摘する。

 また、副作用の問題もある。