金利で明暗! 銀行絶望格差 #1Photo:PIXTA

地方銀行の格差が拡大している。金利上昇局面で保有債券の含み損が拡大し、損切りできた銀行と、含み損を抱えたままの銀行があるからだ。そこで特集『金利で明暗! 銀行絶望格差』(全16回)の#1は、地銀100行の最新決算から有価証券を売却してどれだけの利益を捻出できるかを示す「益出し余力」を算出。資金が潤沢な「金持ち地銀」とそうではない「貧乏地銀」が明らかになった。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

金利上昇で保有債券の評価損益が悪化!
SVB破綻の惨劇は日本でも起こり得るのか

「資本不足に陥ることがないか、眠れない日もある」

 ある地方銀行幹部は、そんな苦悩を吐露する。彼の脳裏をよぎるのは、2023年3月に現実化した、米カリフォルニア州の地銀シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻だ。

 SVBが経営破綻した直接の原因は、取り付け騒ぎである。ツイッター(現X)などSNSで信用不安をあおる投稿が拡散され、預金流出が加速。3月9日にSVBの預金全体の24%に相当する420億ドル(約5兆6500億円)が引き出され、現金不足に陥ったSVBは翌日に破産に追い込まれた。

 その取り付け騒ぎが起きた原因は、総資産の過半を長期国債やMBS(住宅ローン担保証券)に充てていたSVBのポートフォリオにある。

 当時、米金利が急速に上昇した局面で、債券価格は下落。SVBの有価証券含み損が拡大したため、一部有価証券の売却と増資を公表したことが、結果的に信用不安をあおることになった。

 金利上昇に伴い、債券評価損益は悪化する。これは無論、日本の銀行も同様だ。外国債券のみならず、日本銀行によるイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の変動幅拡大を受けて国内長期金利が上昇し、円債の含み損も拡大した。

 日本銀行はSVB破綻後の4月、国内銀行は十分な資本を備えているなどとして「全体として安定性を維持している」とのレポートを出した。さらに銀行の多くは、逆ざやが生じた外債を損切りして損失を計上する一方、より高い利回りの有価証券に入れ替えるリバランスを進めた。

 だが、全ての銀行がそうしたリバランスを進められたわけではない。

 日銀が銀行経営の安定性を測る指標の一つとして注視するのが、「益出し余力」だ。銀行が保有する株式や債券など有価証券の評価損益をコア業務純益で割り、銀行が稼ぐ力の何倍の含み損益を抱えているかを示す。

 全国47都道府県の100地銀を対象に、23年度上期の最新決算から益出し余力を算出したところ、この1年間にリバランスを進めた銀行とそうでない銀行で格差が広がっていることが判明した。

 日本でもSVBのような銀行破綻は起こり得るのか――。次ページで100行の実名入り益出し余力ランキングを公開する。