【ゴミ屋敷】清掃歴10年のプロが振り返る「最も壮絶だった現場」ゴミ屋敷の玄関前に立つ石田社長 ※この画像は本文に出てくるゴミ屋敷ではありません 提供:ゴミ屋敷専門パートナーズ

年末の大掃除が億劫だという人は多いだろう。少しでもモチベーションをあげてほしい。そこで、年間2500件のゴミ屋敷を清掃する「ゴミ屋敷専門パートナーズ」のトップ清掃員に「最も壮絶だったゴミ屋敷」について語ってもらった。この経験と比べたら、自宅の大掃除なんてマシだ。必ずそう感じてもらえる珠玉のエピソードを披露してくれた。(取材・構成/ダイヤモンドライフ編集部)

「最強ゴミ屋敷」
作業を妨げたのはニワトリ?

ーー最も壮絶だったゴミ屋敷について教えてください

石田毅(以下、石田) この仕事を10年ぐらいやっている中で、断トツですごかった現場についてお話しします。

【ゴミ屋敷】清掃歴10年のプロが振り返る「最も壮絶だった現場」ゴミ屋敷専門パートナーズ代表取締役社長の石田毅さん、「人や社会に奉仕する。」がモットー 提供:ゴミ屋敷専門パートナーズ

 その部屋はエレベーターがないマンションの5階で、ワンルームでした。家主は40代ぐらいの男性で、依頼主は管理会社。近隣の方からクレームが出てるので、部屋を退去してもらうために、僕らに依頼がされたとのことでした。

 いつも通り、現場に着く前に電話をして在宅確認が取れたので、そのまま現場に向かいました。到着後インターホンで呼び出したのですが、一向に家主が出てきませんでした。再度電話をさせてもらうと、自宅の中から着信音がうっすら聞こえるので「なぜ出てこないのだろう」と疑問に思いました。

 電話が繋がると「今向かっているのでちょっと待ってください」と言われて2から3分ほど待っていると、ゴソゴソという音が聞こえてきて、ガチャッと扉が開きました。すると、見えたのはゴミの壁。お客様が見当たりません。視線を上に向けると、真上にお客様がいらっしゃって……ゴミと天井の隙間からこちらに顔を覗かせていました。

 ゴミが積み上がりすぎて、立ち上がるスペースは残されておらず、天井付近を匍匐前進しないと部屋を移動できない状況でした。家主が出てくるまでの数分間は、匍匐前進で玄関に来るまでにかかる時間だったようです。

 その方は4〜5年ほどそこに住まれていたようなのですが、長年にわたってゴミが圧縮されていました。初見でのゴミの量は、もちろんすごかったのですが、実際に廃棄するときに2トントラックで4台分になったんです。コンパクトなワンルームからそんな大量のゴミが出てくるなんて、同業者に話しても「ありえない」と口を揃えて言われるほど別格でした。処理業者の人にも「こんなのは見たことがない」とお墨付きをもらいました。ワンルームのゴミ屋敷だと大体1日で終わるケースがほとんどなのですが、そこは5日間もかかってしまったんです。

 ただゴミが多いだけであれば3日ぐらいで作業が終わるはずだったのですが、2日分も余計に時間がかかってしまったのには別の理由があります。

【ゴミ屋敷】清掃歴10年のプロが振り返る「最も壮絶だった現場」画像は本文に出てくるゴミ屋敷ではありません。 提供:ゴミ屋敷専門パートナーズ

 実はゴミ屋敷の家主には犬や猫、うさぎといったペットを飼っている方が少なくありません。そして、このときの家主さんも例に漏れず、なんと鶏を飼っていました。その鶏が1日に1個ほど卵を産むのです。卵も家主さんの持ち物になりますので、潰さないように気をつけなければなりませんでした。もちろん、すでに潰れてしまったものは通常通り清掃しましたが、形を保っているものは、保存する箱に仕分けをしていました。

 鶏を飼っていると騒音問題が発生しないのかなと疑問に思ったので、聞いてみると「メスは鳴かない」と言われました。気になって調べてみると、本当にメスは鳴かないそうですね。絶妙なバランスでお部屋が成り立っていたんだなぁと感心しました。