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経済状況は「天国と地獄」の差!
先進国を凌駕した新興国が迎える“岐路”

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第98回】 2009年10月20日
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 現在の世界経済の状況を見ると、先進国と新興国との間に大きな断層が出来つつあることがわかる。その断層の幅は大きく、ある経済専門家の言葉を借りると、「先進国と新興国との間には、経済的に“天国と地獄”ほどの差がある」と言うことができる。

 多くの先進国は、社会的なインフラ投資の完了による需要の減少傾向や、少子高齢化などの構造的な経済問題を抱えている。それに加えて、リーマンショック以降、不動産バブルの後始末に伴う景気回復の遅れで、需要減少によるデフレ傾向が目立っている。

 一方、新興国では、インフラ投資の活発化や人口増による需要の拡大が見込める。また有力な新興国は、工業化の進展や政府の景気対策によって、足元で景気が急速に回復しており、その熱気が先進国にも伝わってくる。

 今や、それほど先進国と新興国の経済状況は大きく異なっている。このようなトレンドは、今後の世界経済にどのような影響を与えるのか? 詳しく考察してみよう。

 現在、新興国の景気回復は、徐々に世界経済にもプラスの影響を与え始めている。それは、わが国の経済が、アジア諸国向け輸出増加の恩恵を受けて、景気回復への道を辿り始めたことでも明らかだ。

 ただし、新興国の経済規模が相対的に小さいため、今のところ、先進国を含めた世界経済全体を押し上げるには、エネルギーが不足している。新興国経済の高成長が、世界経済全体を持ち上げるだけの実力をつけるには、まだ時間を要すると見るべきである。

 また、新興国には見逃せない問題もある。それは、景気の改善が急ピッチなため、不動産価格の上昇やインフレ傾向が鮮明化していることだ。工業化を迎えた諸国の不動産価格が上昇傾向を辿ることは、ある意味では当然のことと言える。

 しかし、上昇速度が急すぎると、経済全体に歪みができることが懸念される。また、インフレ懸念が本格化すると、社会全体の富の配分や価格体系を大きく崩してしまう。

 そうした状況を放置すると、新興国の経済に大きな障害が発生することが考えられる。そうした弊害に歯止めをかけるために、すでにインドなどでは、金融政策の変更を含めた政策転換の観測も出ている。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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