お金がなくても信用があれば資金集めできる

山口 実際には、お金で時間を買うことも(買収など)、安心を得ることも(保険など)できるのですが、やはり今の大石さんのプライオリティは「精神性>時間>お金」なんですね。大石さんに数回お目にかかって、機動力、行動力のある方だなという印象が強いです。背景に「時間が大切」という考え方があったのか、と納得しました。自分の思ったことは、すぐに実行に移されますよね。

大石 たしかに、考えてから話すのではなく、話しながら考えるところはありますね(笑)。今しかできないことは、お金に関係なくやりたいと思います。

山口 素晴らしい。僕もそう思いますね。

 僕は2005年から始めた事業を2010年に売却しましたが、ひとつ大きな失敗をしたと考えています。それは、時間をかけすぎたこと。振り返ってみると、ビジネスパーソンにとって29歳から34歳という大事な時期に、インターネットで細々と顧客を獲得する方法をとったのは時間の無駄でした。この事業は、1年から長くて2年で終えるぐらいのスピード感でやるべきだった。お金をケチったために、時間がかかってしまったのです。大石さんが言われたように、時間を取り戻すことはできないのだから、これが自分のなかで最大の反省になっています。

 ところで、大石さんにはやりたいことがあるんですよね。

大石 はい。モロッコでリゾート・ホテルをやりたいんです。
 以前、モロッコのフェズという世界遺産の町を旅したのですが、そこは丘の上に迷路が貼りついたようなつくりで、ちょっと油断するとすぐに迷ってしまいます。そこで目にしたのは、迷った瞬間に子どもたちがやってきて、親切に案内するフリをしてお金を取るというむき出しの欲でした。

 精神的に疲れてしまい、とぼとぼとホテルに向かったのですが、目の前に現れたのが、そこだけ別世界のような素晴らしいホテルでした。食事の質も高く、従業員の人たちも素晴らしく、屋上に上がると世界遺産の町が一望できて、心からくつろげる環境。現地の人のむき出しの欲に参っていた心が癒されました。モロッコではこのホテルのように、資産家が住んでいた邸宅をホテルとして使えるように改装した「リャド」が多く、私の泊まったホテルも4個室ぐらいのこじんまりしたホテルでした。私もそういう邸宅を買って運営したいなと。

山口 唐突に感じるかもしれないけど、僕は、できることなら、今、モロッコの邸宅を買うべきだと思います。

大石 え?今ですか?